米企業ら、社会的距離を人工知能カメラで監視 ~ ウイルス感染対策に機械視認技術を活用

新型コロナウイルス感染症コーヴィッド19(COVID-19)の基本的対策として、各国の政府や自治体は社会的距離(ソーシャル・ディスタンシング)やマスク着用を義務化または奨励しているが、市民がそれを遵守しているかどうかを追跡することは難しい。ロイター通信によると、一部の会社ではそこで、人工知能ソフトウェアを基盤とする監視カメラを活用し始めた。

▽作業員間の距離を監視する建設会社

シカゴ拠点の建設大手ペッパー・コンストラクション(Pepper Construction)は、ケンブリッジ(マサチューセッツ州)拠点の新興企業スマートヴィッド・ドット・アイオー(SmartVid.io)のソフトウェアを採用し、オラクルを施主とするイリノイ州ディアフィールドの建設現場において、作業員らの物理的間隔を人工知能とカメラによって認識して密集をできるかぎり回避するよう監視している。

ペッパーによると、同システムはこれまでのところ、問題となる状況を検知したことはないが、作業員がこれから増えることから、経過を見ながら警告を出す方針だ。

一方、インドのダイアモンド加工大手サマース・ダイアモンド(Samarth Diamond)は、グラジャートにある工場(従業員数4000人)を再開させるにあたり、インド拠点の新興企業グリンプス・アナリティクス(Glimpse Analytics)の人工知能技術を採用し、職場の混雑具合を検知するシステムを導入した。

▽RPTリアルティ、ショッピン・モールで来客数と社会的距離を追跡

かたや、ミシガン州で2ヵ所のショッピング・センターを運営するRPTリアルティ (Realty)は、カリフォルニア州拠点の新興企業REインサイト(RE Insight)が開発したカメラ・ソフトウェアを採用し、ショッピング・センター内での社会的距離を監視し始めた。RPTリアルティは、REインサイトの技術を使って来客数を過去数ヵ月ほど数えている。

RPTリアルティはさらに、新興企業ウェイトタイムズ(WaitTimes)のソフトウェアを使って、モールに入る来客の列を分析し、その結果を消費者と共有することで、モールに行くのに最適な時間帯を判断できるようにしている。

▽機械視認技術の認識率は80%

動画分析技術を提供する16社をロイターが調べたところ、コーヴィッド19を受けて動画分析ソリューションの提供数が増えているという。それらのソリューションは分析結果の報告書を担当者らに毎日転送する。現場責任者たちはそれをもとに対策や再発防止策を講じることができる。

それらのソリューションでもっとも多用されているのは機械視認技術だ。人工知能基盤の機械視認ソフトウェアは、膨大な数の画像データを学習して認識力を高めたシステムだ。一般的には80%の認識率を実現する。

一部の利用者によると、機械視認技術を活用した監視システムは、汎用のビデオ・カメラを使って年間1000ドル程度のコストで画像分析を可能にする。そのため、現場の守衛を雇うよりはるかに低コストですむ。

▽正式採用への前進も機械視認には限界あり

社会的距離を計測したりマスク着用を検知する機械視認技術は、これまで試験的に運用されてきたが、それらのソリューションは現在、試験運用から正式採用に前進しつつある。それに加えて、複数の新興企業では、くしゃみや咳を検知する監視システムを構築しようとしている。

ただ、機械視認には限界もあることから、誤判断に関する懸念は当初から指摘されいる。たとえば、家族同士の近接接触は社会的距離対策の対象外とあつかわれるが、人々が家族同士なのか他人同士なのかを人工知能が判断することは不可能だ。そのため、検知技術ソリューションを提供する新興企業インダイム(Indyme)は、同社の顧客会社が入り口で来客数を数えて、「6フィートの社会的距離をとるよう」自動音声で呼びかけ るだけで十分だと主張する。

▽検知報告の大量さとプライバシー侵害の懸念

そのほか、技術コンサルタントらの一部は、今回の混乱期に新システムを導入しないよう顧客である小売業者や事務所所有者らに助言している。精度の限界によって、問題がないにもかかわらず大量の報告書が自動生成されることで負担が増えるという弊害があるためだ。

また、機械視認システムにはプライバシー侵害懸念がつねにつきまとうことは言うまでもなく、人権擁護団体らはすでに反発している。導入側は、個人を特定できないシステム設計になっていることや、検知データにアクセスできる担当者が限定され、厳しく管理されることを理由に、プライバシーは侵害されない、と説明している。しかし、感染対策の名のもとに導入した監視や追跡技術が、パンデミック収束後にも活用される恐れがある、と指摘される。

【reuters.com/article/us-health-coronavirus-surveillance-techcompanies-bet-on-ai-cameras-to-track-social-distancing-limit-liability-idUSKCN22914R】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

ニュースレター
アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用
Vrbo Japan

注目の記事

  1. ステンレス製のお皿にライスが隠れるようにルーを全体にかけ、その上にトンカツ、そして付け合わせにはキャ...
  2. この原稿を書いているのは2020年6月12日。昨日、ニナの義務教育が終了した。オンラインでの...
  3. アラスカ州とカナダの国境地帯に広がるのは、世界最大規模の自然保護区。北米大陸最高峰の山々に世...
  4. コロナ禍の3カ月の自粛生活は、私たちそれぞれに、自分の忙しい生活を今一度振り返る良い機会とな...
  5. ニューヨークを拠点に、さまざまなセミナー、フェスティバルやディナー会などのイベント、質の高い日本食を...
  6. 疲労の原因には、精神的ストレス、身体的ストレス、生活環境ストレス...
  7. 2020年6月6日

    第74回 世界は変わる
    新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的大流行が起こってから、約2カ月が過ぎようとして...
  8. 2020年6月5日

    第82回 実践的教育
    この原稿を書いている2020年4月現在、全米は新型コロナウイルスのパンデミックの渦中にある。...
ページ上部へ戻る