新興企業のインヴィジブルAIは、組み立て工員らの動作を機械視認技術によって追跡し、作業現場の安全性と効率性の維持に役立てるカメラとコンピュータの一体型機器を開発した。テッククランチ誌によると、同システムは、工員監視というより、手本となる動作との比較を可能にすることで、工程の品質管理と合理化を実現することに焦点をあわせることを特徴とする。
▽労働者の監視より作業能力の補完に重点
インヴィジブルAI(Invisible AI)のシステムは、機械視認アルゴリズムによって労働者の動作を追跡し、その動きを見本の「正しい動き」と比較することで、部品欠損やけがといった作業工程での間違いやそのほかの問題を発見する。
動作を追跡する同様の技術は、生産性が低い工員や、手順通りに行っていない作業員を見つける手段として一部の業界ですでに導入されている。しかし、インヴィジブルAIのエリック・ダンジガー共同創業者兼CEOは、そういった用途を否定しており、労働者たちの能力を補完することにある、と強調する。
たとえば、自動車の組み立てラインの場合、労働者は10以上の工程を短時間にこなすことが求められる。インヴィジブルAIのシステムは、機械視認アルゴリズムによって、作業に漏れや間違いがないかを再確認することで、問題をその場で発見して修正し、やり直しの労力と時間を回避するのに寄与する。
▽設置開始から1時間ほどで利用可能に
作業動作追跡システムを導入するにあたり重視される要素の一つは、システムをいかに簡単に導入し活用できるかということだ。導入に1ヵ月を要し、さらにシステムの再プログラムに何日もかかるようでは使い勝手が悪い。インヴィジブルAIはそこで、設置と管理の簡便さに重点を置き、コード不要の完全末端基盤機械視認システムの開発にこだわった。
同社のシステムの場合、コンピュータ内臓型カメラを工場に設置し、組み立て工程の複数の「見本」をカメラに「示す」だけで準備は完了する。カメラから「結果」をイントラネットに送信するための通信手段を確保する必要はあるが、たとえば動画をクラウドに送って解析するような「複雑な設定」は不要だ。
ダンジガー共同創業者兼CEOによると、顧客会社らはカメラの設置開始から1時間ほどで同システムを利用できるようになる。
カメラと機械学習を設定さえすれば、労働者の動作を追跡して見本と比較するという作業自体は単純だ。導入会社はむしろ、労働者のプライバシー侵害懸念や、カメラに常時さらされることに対する居心地の悪さといった指摘に適切に対処することが求められる。
同社の顧客にはトヨタがある。トヨタは、インヴィジブルAIの技術開発に初期から協力してきた提携社の一つ。
▽熟練労働者の体得した動きを引き継ぐ効果的方法
アマゾン(Amazon)の倉庫でみられるように、会社側はときに、効率化技術の導入によって非人間的な生産性向上を労働者に求めることがある。
しかし、インヴィジブルAIの技術の場合、作業の効率化や合理化に役立つ熟練労働者の動きを手本として見本化し、機械視認による照合の対象とすることで、熟練労働者の経験にもとづくノウハウや知識をほかの労働者に伝えるという点で労働者の能力向上を期待できる、とダンジガー氏は説明する。
インヴィジブルAIはこのほど、ベンチャー・キャピタル投資会社の8VCが主導したシード資金調達ラウンドで360万ドルを集めた。同社には、アイロボット(iRobot)やK9ベンチャーズ(K9 Ventures)、シエラ・ベンチャーズ(Sierra Ventures)らが投資している。
シード段階の資金調達は起業初期を意味し、投資規模や投資した会社数がまだ限定的である状態を示す。同社のソリューションが実効性を証明すれば需要が増え、シリーズAの資金調達ラウンドに前進し、投資規模と投資する会社数が拡大する。
【techcrunch.com/2020/05/06/invisible-ai-uses-computer-vision-to-help-but-hopefully-not-nag-assembly-line-workers/】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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