新型コロナウイルスによる経済的・社会的混乱を経験した多くの企業が、在宅勤務への恒久的な移行を検討している。
■IT業界が先導
ウォールストリート・ジャーナルによると、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは最近、新型コロナの世界的流行を契機とした働き方の見直しで、5~10年後は同社社員4万5000人の半数がリモートワーク(遠隔勤務)になるとの見通しを示した。その前にはツイッターも、在宅勤務を希望する社員は「永久に」続けられるようにすると発表している。オンラインストア開設プラットフォームのショッピファイ(Shopify、カナダ)も、将来はほとんどの社員を自宅で働かせるようにするという。
クラウド関連企業ボックス(Box)のアーロン・レビCEOは、フェイスブックの計画を受けてツイッターに投稿し、「インテルやHPといった企業が何十年にもわたってテクノロジー業界のやり方を作ったように、新しいデジタル企業が21世紀のために再構築している」と述べている。
オープンオフィスから迅速な開発に至るまで、テクノロジー業界のトレンドはより広い業界に広がる傾向があり、リモートワークへの恒久的な移行に関しても、IT業界以外の企業の追随が始まっている。マーケティングや広告業界の大御所マーティン・ソレル氏はコロナが流行する前、ロンドンを拠点とする自身のメディア会社S4キャピタルには賃貸オフィススペースやウイーワークのような場所が必要と考えていた。しかし、ロックダウン(都市封鎖)が始まって1カ月ほどたち、日々の業務をオンラインでこなすようになるとその考えを改め、「オフィ スのリースを解約して社員に自宅での時間を増やしてもらおうかと考えている」という。
■対応ツールの需要が急増
IT業界団体のコンプTIA(CompTIA)が米テクノロジー企業200社以上を対象に実施している調査によると、2020年4月は業務用技術サービス会社の80%以上が「顧客企業は通信や共同作業その他のリモートワーク・ツールを求めている」と回答し、前月の76%から増加した。またビジネス関連のSNS大手リンクトインでは、過去1カ月間にリモートワークの求人広告が28%増加し、「remote(遠隔)」 「work from home(在宅勤務)」といった言葉による検索が42%増加したという。
大手ITプロバイダーは、地域的なロックダウンの解除後もリモートワークやビジネス継続ツールの需要は高まり続けると見ており、この結果企業向けITプロバイダー大手が、分散した労働力を支援するための共同作業、アクセス管理といった機能を開発するスタートアップを買収する例が急増する可能性がある。
ソフトウェア会社ライフサイズ(LifeSize)のクレイグ・マロイCEOは、必要な技術が使えるにもかかわらずその導入拡大をためらっていた多くの企業が、パンデミックへの対応を通じてリモートワークの実行可能性に気づいたと指摘する。「これはリモートワークの大規模普及に向けた転換点であり、雇用主は分散したチームが永続的に自宅から仕事ができるようにしていくだろう」
全社員が在宅勤務しているソフトウェア開発会社ギットラブ(GitLab)のダレン・マーフ・リモート責任者は「今回の危機がリモートワークの導入を10年以上早めた」と見ている。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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