新型コロナウイルスで生じた危機によって移動の習慣が一変し、都市交通の変革が加速している。ウーバーなどの配車サービス会社は、公共交通システムにソフトウェアの専門知識を売り込んでいる。
■競争から共存へ
ロイター通信によると、米国では過去2年間で、ユタ州ソルトレイクシティー、ミズーリ州セントルイス、ニュージャージー州ジャージーシティーなど120以上の自治体の交通機関が配車サービスと提携した。サンフランシスコを含むカリフォルニア州マリン郡でも、2020年7月から車いすが使える公共バンをウーバーのアプリケーションで予約できるようになる。
ウーバーは現在、ソフトウェア基盤の事業展開のために世界で10を超える交通機関と交渉中で、デイビッド・ライク輸送部門責任者は「当社にとってソフトウェアの提供は利益率の高いサービスで、長年かけて構築した技術を活用している」と話す。
リフトやウーバーといった配車サービスはこれまで、バスや鉄道と通勤客を奪い合っていたが、コロナ危機でコスト削減や新しい商機を見出す必要に迫られ、互いに依存するようになった。都市の多くは、配車サービスに委託して提供するオンディマンド・サービスを拡張したり、恒久的に導入したりする計画を立てている。これでコストが削減されるだけでなく、商業地区へのアクセスが向上し、公共交通機関の利用に慎重な通勤者や買物客の車の利用を抑制できると見込まれる。
また、自治体は利用者の少ない路線を配車サービスに置き換えることで保険費用の負担を軽くでき、既存のバスをより収益性の高い路線に集中させられる。
■低需要路線を配車サービスに
州は経済活動を再開しているが、移動の需要は依然として19年よりはるかに低く、配車サービス各所はコストや人員の大幅な削減を強いられている。一方、公共交通機関は、住民のニーズがなくなった路線で客が少ししかいないバスを走らせるコストに苦しめられている。
フロリダ州マイアミデイト郡の運輸当局者はウーバーとリフトについて「私たちは共同で作業する必要があり、彼らのテクノロジーで提供される柔軟性が本当に大きな役割を果たしている」と語る。同郡はパンデミックの最中、乗客が80%減少したことを受けて夜間のバスを補助金付きの配車サービスに置き換える取り組みを始めた。現在はより大きなバス路線再編計画の一部として、この方式の永続的な提供を計画している。
コロラド州デンバーとネバダ州ラスベガスではすでに、世界中で15以上の都市情報を統合しているウーバーのアプリを使って市民が乗車券を購入できる。ウーバーは世界で30以上の交通機関と提携し、乗せた客を交通のハブへと接続したり、利用者の少ないバス路線を代行したり、車いすでのアクセスを提供したりしている。
リフトは米国とカナダのみで事業展開しているが、16年にトランジット・プログラムを開始して以来、80以上の都市と提携し、交通ハブ接続、相乗りサービスなどのパラトランジット、夜間および週末のサポートを提供している。
また、世界6都市で消費者向け配車サービスを展開するビア(Via、ニューヨーク州)は、世界で90以上の交通機関と提携。サービスの約80%は純粋にソフトウェアベースで、交通機関は同社のルーティング(経路決定)技術を使っているという。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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