アマゾンが6月末に買収した新興企業のズークスは、自動運転技術に関する特許という点で大きな競争力をアマゾンにもたらしたとみられる。フォーブス誌によると、アマゾンによるズークス買収は、自動運転車(autonomous vehicle=AV)を使った配車サービスや配達サービスへの進出に向け、特許という観点から6つの動機(理由)があると考えられる。
▽パテントサイトがズークスの特許を分析
ズークス買収額は非公表だが、フィナンシャル・タイムズ紙は、アマゾンが12億ドルを払ったと報じた。2014年にシリコン・バレーで設立されたズークス(Zoox)は、配車サービスに使われるAVをゼロ排気にする目標を掲げている。アマゾンは、AVを使った配車サービスと配達サービスを次なる開発注力分野として位置づけている。フォーブス誌がパテントサイト(PatentSight)に依頼した特許分析によると、ズークスがこれまでに取得した数百件の特許の多くは、人工知能を基盤とした機能強化学習に関係する。
パテントサイトによる分析の結果、アマゾンがズークスの事業資産に魅力を感じた理由として次の6点が挙げられる。
1.特許にもとづく企業競争力評価、ズークスはAV分野で4位
パテントサイトは、特許が企業にもたらす競争力を「コンペティティヴ・インパクト (Competitive Impact)」と呼んでいる。その指標をみると、ズークスは、会社規模に比して非常に高い特許競争力を持っていることがわかる。
2018年末時点の自動運転技術に関する特許をみるかぎり、コンペティティヴ・インパクトがもっとも高いのはテスラで、次いでアルファベット、アマゾン、そしてズークスだった。特許取得数では、アルファベットが首位で、以下、フォード、GM、トヨタらが続く。
コンペティティヴ・インパクトの点数は、技術大手らが自動車メーカーらより一般的には高い。伝統的な自動車メーカーや部品メーカーのうち、コンペティティヴ・インパクトの平均値を上回ったのは、GMとフォード、そしてボルボの3社のみだった。
2.AV開発大手らに比べて特許取得速度が鈍化
パテントサイトの分析によると、ズークスは、アルファベットやフォード、GMをはじめとする巨大会社らと比べると、特許取得の速度が鈍化しつつあった。新興企業にありがちの資金力継続性の低下が要因とみられる。そのため、買収標的として好条件だったとみられる。
3.ズークスの特許は高価値
パテントサイトが測定している特許資産指標(Patent Asset Index)では、ズークスの持つ特許の多くに高い点数がつけられている。ズークスの特許に高い価値があることを示す材料だ。
4.重複しない取得分野
アマゾンが最大の特許ポートフォリオを持つ分野はナヴィゲーション技術だ。一方、ズークスが強みとしているのは、運転支援と信号、クルーズ・コントロールだ。したがって、ズークスはアマゾンにとって魅力的な買収標的だったことが明確だ。
5.特許の価値を相互補完
アマゾンとズークスの分野別の保有特許を特許資産指標でみると、ズークスが高価値特許を持つ分野と、アマゾンが高価値特許を持つ分野は、ほとんど重複しないことから、特許群の価値を補完し合うことが明示された。
6.アマゾンの特許競争力、ズークス買収で3倍に
パテントサイトの分析では、ズークスの買収によってアマゾンが特許競争力を3倍に高めたと結論された。アマゾンは、自社技術の手薄部分を補強する必要があり、それを補完するのがズークス買収だった。
【forbes.com/sites/louiscolumbus/2020/07/12/using-patent-analytics-to-see-why-amazon-bought-zoox/#732006e5ab62】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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