マッキンゼー(McKinsey)は、5Gが製造業界に革命をもたらす可能性があると考えている。マニュファクチャリング・グローバル誌によると、マッキンゼーは、5Gが製造業にもたらす大きな革新として、1)製造機械のクラウド制御、2)拡張現実、3)工場現場での知覚人工知能、4)意思決定の迅速化、5)工場現場のIoT、という5つを挙げている。
1.製造機械のクラウド制御
製造工場の自動化はこれまで、PLCs(programmable logic controllers)を必要としてきた。PLCsは、製造機械に物理的に実装され、精密かつ信頼性ある制御機能を担保するために、現場のコンピュータ通信網に接続されなければならない。
5G技術が一定以上の機能性を安定的に実現されれば、PLCsはクラウド電算プラットフォーム上で仮想化でき、その結果、製造機械をリアルタイムかつ無線で制御できるようになる。
2.拡張現実
工員らは、製造機械の複雑な保守(整備)や制御、操作をおもな職務とする場合が多い。それらの職務内容と工程内容は従来、紙の書類や動画で説明される。近年では、特殊機械の操作方法やそのほかさまざまの専門的作業が拡張現実(augmented reality= AR)技術によって熟練工から遠隔指導される効率化策も実施されるようになった。
しかし、4G通信網を使ったARでは、帯域幅が不十分であることから、求められる水準の質を安定的に提供できない。その点、ARに5Gを使えるようになれば、指導内容を高品質で逐次転送できるようになるだけでなく、複雑な工程を最初から最後まで通信が落ちることなく指導できる安定性を実現できる。
3.工場現場での知覚人工知能
工場内のカメラはかなり前から当然の設備となっている。工程や工員動作、工場内セキュリティーを確認するのにカメラは必須だ。しかし、従来のカメラ・システムは、特定の用途に限定され、また、担当者が撮影内容をのちに確認しなければならない。
5Gを応用すれば、撮影内容を高精細映像データとしてクラウド・システムに即時かつ逐次転送でき、担当者がすぐに確認できるようになる。
4.意思決定の迅速化
しっかり運営されている工場というのは、膨大な量のデータの分析結果にもとづいて意思決定がくだされている。5Gによってそれがさらに向上することは確実だ。収集できるデータの量も速さも従来から格段に改善され、膨大な量のデータを行動可能の洞察にリアルタイムで変換できるシステムを実現できる。
重工業の大型工場の場合、工場用電力を自前調達している場合があり、工場稼働量が減ると余剰電力が出ることもある。そのため、送電網に売電することで工場運営コストを抑制するといった手法がとられる。その際、機械を休ませる時期や時間帯、電力レートの関係から余剰電力を売る適時を判断するのにデータとその即時分析は欠かせない。
5.工場現場のIoT
産業用モノのインターネット(IIoT=Industrial Internet of Things)が製造現場に普及中であり、工場内のあらゆる設備や機械に検知器が多く設置され、それによって、過去にない大量のデータが常時生成されるようになった。
有線通信網でそれらを転送するのは非常に高価で、かといってワイファイ通信網を多用すればすぐに渋滞(混雑)し、信頼性と安定性が損なわれる。
5Gはそれらの問題を解決し、何千単位というデータ源からの高密度転送を高速で可能にし、産業データの質と量、応用、可用性を大幅に拡充する。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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