いわゆるギグ労働者を従業員としてみなすか「独立請け負い業者」としてみなすかをめぐり、カリフォルニア州が今回の選挙で州民に問うた州民発議案22号(Proposition 22)は賛成多数で可決される見通しだ。その結果、ギグ労働者は独立請け負い業者として区分されることになる。テッククランチ誌によると、発議案22号の可決は、ウーバーやリフト、ドアダッシュといった共有経済モデル新興企業にとって大きな朗報となる。
▽共有経済型新興企業対サービス業労組の闘い
カリフォルニア州発議案22号は、4日午前の時点で99%が開票済みで、賛成が 58.4%、反対が41.6%となり、可決が確実視される。
同発議案は、ウーバー(Uber)やリフト(Lyft)、ドアダッシュ(DoorDash)、ポストメイツ(Postmates)といった共有経済モデル新興企業らによって支持されていた。
それらの新興企業やその投資会社たちから、賛成派の選挙運動に対する献金が流入し、最終的な資金集めの総額は2億500万ドル前後に達したとみられる。カリフォルニア州の発議案をめぐる選挙運動としては、1999年以来最高額の選挙運動となった。
一方、発議案22号の反対派には、サービス業や外食産業の従業員を代表する労組らが名を連ねた。
▽ギグ経済とギグ労働者とカリフォルニア
共有経済型の事業モデルは、ギグ経済(gig economy)とも呼ばれる。ギグ経済は、独立した個々の労働者が単発または短期、あるいは需要発生時だけに労働力(サービス)を提供するという契約にもとづいて経済活動する形態だ。その労働者はギグ労働者(gig worker)と呼ばれる。
ウーバーやリフトの運転者や、ドアダッシュの出前配達員、倉庫型大型小売チェーン最大手コスコ(Costco)のオンライン購入品配達員らは、モバイル・アプリケーション経由で入ってきた注文(需要)がある場合にだけ働く。会社側はそれらの労働力を独立請け負い業者としてみなし、発生した売り上げを分配する報酬制度と契約にもとづいて雇っている。したがって、保険や福利厚生の対象外と主張し、カリフォルニア州議会や州当局と対立した。
▽2019年ギグ・ワーカー法に対抗する発議案
発議案22号は、モバイル・アプリケーションを使った移動交通サービスや配達サービスの運転手らを独立請け負い業者として区分したうえで、業務遂行中(待機時間を除く)でも最低賃金の120%以上の報酬を保証し、経費として1マイルあたり30セントの払い戻しに応じ、また健康保険や労災保険の手当ても出すことを義務づけている。
同発議案は、カリフォルニア州議会が2019年に制定したいわゆる「ギグ・ワーカー法」に対する直接的な挑戦として提案された。ギグ・ワーカー法は、事業体の中核業務を遂行するといった一連の条件を満た請け負い業者を従業員として区分し、従業員と同じ報酬や福利厚生を提供するよう事業体に義務づける内容だ。したがって、共有経済新興企業らの経営を深刻に圧迫することになるため、共有経済の事業モデルに大きな逆風をもたらした。
▽ウーバーのCEO、「独立請け負い業の未来が明るくなった」
ウーバーとリフトは現在、ギグ・ワーカー法をめぐる訴訟の最中だが、発議案22号が可決確実になったことで同訴訟の論拠が大きく変化するとみられ、勝訴する可能性が一気に高まった。
ウーバーのダラ・コスロシャヒCEOは住民投票の開票経過を受けて、「独立請け負い業の未来が明るくなった」と述べた。
また、反対派の急先鋒であるギグ・ワーカーズ・コレクティブ(Gig Workers Collective)は、「企業が選挙を金で買えるべきではない。しかし、われわれは今後も闘い続ける準備がある」と声明を発表した。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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