製薬大手ファイザー(Pfizer、本社ニューヨーク州)は、ドイツのビオンテック(BioNTech)と共同開発する期待の新型コロナウイルス・ワクチンを、認可取得と同時に素早く世界に供給できるよう綿密な準備を進めている。
■専用の輸送容器開発
ウォールストリート・ジャーナルによると、同社はミシガン州カラマズーに大規模な供給ハブを構築し、フットボール場ほどの広さの土地に350台の大型冷凍庫を設置して、世界中に出荷するワクチン数百万回分を保管できるようにしている。
また、連邦食品医薬品局(FDA)や世界中の規制当局から認可された場合にすぐ行動できるよう、流通パートナーと協力して輸送システムの構築にも取り掛かっている。2020年内には最大1億回分、21年にはさらに13億回分を出荷したい考えで、供給網担当のタニヤ・アルコーン副社長は「史上最大の予防接種キャンペーンになる。FDA承認が得られればすぐにワクチンを出荷できる」と話している。
ワクチン世界配布の中心になるのは、2つの最終アセンブリーセンター(カラマズーとベルギーのプールスにある一時保管施設)の冷蔵保管所で、毎日数十回の貨物機フライトと数百回のトラック輸送を予定している。ウィスコンシン州プレザントプレーリーとドイツにある配送センターの貯蔵能力も増強しており、ファイザーはワクチンの開発と流通網の構築にこれまで約20億ドルを投じている。
米国政府は同社にワクチン1億回分を注文し、さらに5億回分を購入するオプションを確保した。欧州連合(EU)も1億回分のオプション付きで2億回分を発注している。また、日本は1億2000万回分、英国は3000万回分を注文し、南米やアジア太平洋地域の国々も大口注文を出している。
■3日で目的地に到達
通常の予防接種では、製薬会社は製品の認可を待って原材料を仕入れ、製造ラインを確立し、出荷のための供給網を構築するが、今回ファイザーは、ワクチン開発を開始した20年3月の時点で供給網の基礎を構築し始めた。アルバート・ブーラCEOは「世界中で10億人以上にこのワクチンが行き渡るようにすることが、ワクチン自体の開発と同じくらい重要」と話す。
同社はすでに米国と欧州の倉庫には数十万回分のワクチンを保管しており、安全かつ迅速に輸送するための容器も新しく設計した。スーツケース大の容器は再利用が可能で、ドライアイスを含めて1000~5000回分を収納でき、最大10日間ワクチンを超低温に保ち、衛星利用測位システム(GPS)で追跡できる。新型容器を使うことで、輸送機やトラックは通常の温度管理可能な大型特殊コンテナを待たなくてもよくなるため、輸送の柔軟性が高まり、より速くワクチンを出荷できる。
ファイザーは、1日約約760万回分のワクチンを新容器に詰め、カラマズーとプールスから計24台のトラックで空港に運び、フェデックス、UPS、DHLインターナショナルが運航する1日平均20便の貨物機スペースを利用してワクチンが投与される医療施設の近くまで運び、トラックで最終目的地まで届ける計画。配送センターからワクチン接種場所までの総輸送時間は平均3日を見込んでいる。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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