ワクチン輸送でドライアイス業界大忙し

現在、連邦規制当局の承認を待っている新型コロナウイルス感染症ワクチンは、超低温で出荷、保管しなくてはならない。その際必要なドライアイスのメーカーは、需要の急増に備えている。

■マイナス70度

ウォールストリート・ジャーナルによると、米国では近くファイザーのワクチンが認可される見通しで、最終的には全米で大規模なワクチン接種が行われることになる。ファイザーは2020年内に米国で2500万回分、21年には全世界で13億回分を配布する予定だが、同社のワクチンは安定性と効果を維持するために、マイナス70℃で出荷・保管する必要がある。

保管や輸送にこれほどの低温を必要とする医薬品はほとんどなく、モデルナが開発しているワクチンも、ファイザーのワクチンほどではないが低温で保存する必要がある。ファイザーのワクチンは、解凍後最大5日間の冷蔵が可能だ。

ドライアイスの温度はマイナス78℃前後で、ワクチン・サプライチェーンの一角を担うドライアイスメーカーは需要の急激な高まりに備えている。ミズーリ州の3工場でドライアイスを製造するシー・ケイ・サプライ(Cee Kay Supply)は 11月、ドライアイス・ペレット(小片)の生産量を増やすための機械を購入し、二酸化炭素をより多く貯蔵するための断熱タンクと、1回で約3万ドル分のドライアイスを輸送できる産業用クーラーも100個以上購入した。

運輸大手UPSも11月、米国とカナダの自社施設でドライアイスの生産能力を1時間当たり1200ポンドに高めたと発表。ファイザーは、ミシガン州カラマズーとウィスコンシン州プレザントプレイリーの施設でドライアイスを製造するための機器を購入している。

また、ドライアイス洗浄技術大手のコールド・ジェット(Cold Jet)は、ワクチン製造業者や物流会社などによる「ドライアイス争奪戦」に対応するため、ドライアイス製造装置の生産を4倍に拡大した。

■原料の供給は回復

ドライアイスは、エタノールや肥料の生産過程で出る副産物の二酸化炭素から作られる。しかし20年は春の自宅待機令で多くの米国人が車を運転しなくなり、ガソリンにブレンドされるトウモロコシ由来のエタノール需要が低下したため、二酸化炭素の供給量も低下した。その後エタノール生産は回復しており、二酸化炭素の供給業者は今後のドライアイス需要の上昇にも対応できると見ている。業界団体・圧縮ガス協会のリッチ・ゴットウォルドCEOは、ワクチン接種の推進によってドライアイスメーカーからの二酸化炭素需要はトータルで5%増加すると予想する。ドライアイスを必要とするのは医療分野だけではない。コロナ禍で食品のオンライン購入が増えたため、食品宅配で使うドライアイスの需要も急上昇している。テキサス州拠点のリライアント・ドライアイスは、食品配送業者からの高い需要を受けてすでに国内8工場の大部分を24時間体制で操業しており、シフトの追加を検討している。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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