半世紀以上の歴史で初めて完全オンライン開催された今年の消費者電子製品見本市 CES(1月11日~14日)では、人工知能のほかに新型コロナウイルスに対抗するソリューションの出展が非常に目立ち、あたかも感染予防策見本市のような様相を呈した。ウォール・ストリート・ジャーナルの技術製品評価担当者ジョアン・スターン氏によると、マスクと消毒、体温検出という三つの製品分野が今回のCESを特に象徴する存在になった。
1.ハイテク・マスク
エアーポップ(AirPop)は、150ドルのマスク「エアーポップ・アクティブ・プラス(AirPop Active+)」を出展した。同製品は、インターネットに接続して呼吸回数を記録する。記録中にマスク外側のLED照明が点灯する。
同社設立者のクリス・ホスマー氏は、6年前に中国に住んでいたときに娘が大気汚染によって急性呼吸困難に陥ったのをきっかけに、マスクの開発に乗り出した。エアーポップ・アクティブ・プラスには、ブルートゥース接続の検知器が搭載され、呼吸回数のほか、空気質や遮断された汚染物を測定できる。
出荷は2月の予定だが、検知器を搭載していない型は56ドルですでに販売されている。
かたやLGは、身体装着型の空気清浄機を開発した。検知器のみならずHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルターを搭載し、マスクのように両耳にかけて口と鼻を覆う設計だ。同製品は現在、香港と台湾、イラクでのみ販売されている。
そのほか、マスクをしていても電話で話しやすいようにする「マスクフォン(MaskFone)」という製品も出展された。耳にかけるひもの部分にブルートゥース・ヘッドセットが取り付けられたつくりが特徴だ。価格は50ドル。
2.消毒機器
コンピュータ周辺製品メーカーのターガス(Turgus)は、紫外線LED照明で消毒効果をもたらす机上照明を開発した。モニターの前に置いてキーボードを照らすよう設置でき、1時間に1度、5分間にわたって自動的に点灯する。そによって雑菌やウイルス、カビを99%除去できるという。動作検知器が付いているため、キーボードの前に人が座っているあいだには点灯しない。4月に出荷される予定で、価格は299ドルだ。
スマートフォンを箱に入れてそのなかで紫外線を照射する消毒装置もすでに出回っているが、紫外線を使う取り組みの最大の難点は、消毒効果が見た目にわからないことだ。科学的には効果が証明されているため、それを信じるしかない。
LGは、オフィス内のキュービクルや乗用車といった比較的狭い空間を想定した小型空気清浄機を米国で約200ドルで販売している。牛乳容器大の装置で、スマートフォンから操作でき、空気質検知器も搭載している。
一方、ラフト・デュオ(Luft Duo)は、世界最小の分子清浄機という触れ込みで、缶ジュースよりも小さい空気清浄機を開発した。同製品は、スマートフォンでの操作には対応しない。
3.スマート体温検出
プロット・エティー(Plott Ettie)は、赤外線体温計を搭載した動画インターコムだ。スマートフォンに接続でき、どこにいても自宅の訪問者を見ることができ、その人の体温も表示される。2021年中に出荷される予定。価格は300ドル前後の見通し。
ただ、医学研究機関スクリップス・リサーチ(Scripps Research)の心臓学専門医エリック・トポル博士によると、体温は感染症の明確な指標にはならない。新型コロナウイルス感染症と診断される人のほとんどは、熱発がないという。
同博士が価値があると考える機器は、食品&医薬品局(FDA)から医療機器としての販売認可を受けたバイオインテリセンス(BioIntelliSense)のバイオボタン(BioButton)だ。皮膚に貼りつけて使う同製品は、体温や呼吸、睡眠、心拍を継続的に監視する。
バイオボタンは本来、さまざまの疾患の患者の容態を追跡するために開発されたが、新型コロナウイルス感染症の検出にも使うことができ、早期検出も可能となると期待される。まもなく発売予定で、価格は約60ドルだ。
バイオインテリジェンスによると、セントルシアでは、到着前1週間にわたってバイオボタンを装着するよう入国者全員に義務づける計画だという。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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