人材の発掘と採用で人工知能の役割りが拡大~ 人材争奪戦が予想される2021年に人材を獲得するには

人工知能活用の雇用ソフトウェアを提供するハイヤーチュアルのスティーヴン・ジアン共同創業者兼CEOは、2021年前半に経済再生にともなって企業による人材争奪戦が起こると予想する。ベンチャービート誌によると、同氏はその結果、優秀な人材の発掘および獲得にとって人工知能の役割りが2021年にさらに重要になると同時に、ソーシャル・メディアを人材発掘の場所とする動きが強まる、という見方を示した。

▽人材発掘業者および採用担当者らの半数以上が人材獲得競争激化を予想

ハイヤーチュアル(Hiretual)が人材採用および発掘の専門業者および担当者350人を対象に2020年11月に実施した調査では、2021年の人材採用に関する最大の懸念として人材獲得競争激化を半数以上が指摘した。

ジアンCEOによると、人材採用業者および担当者らは2020年に雇用側との接点を増やし、さらに採用候補者の発掘や採用手続きを自動化することによって、採用までの時間を短縮するために人工知能の活用を積極化させている。

それと同時に、上述の調査では、2021年については人材発掘にかかる時間を短縮したいと考える人材資源業者が半数以上を占めた。

▽人材発掘対象地域の拡大と柔軟な勤務形態がカギ

2021年は、在宅勤務希望者が例年になく多く、人材発掘業者らはみずからも在宅勤務をしながら人材発掘の対象を地理的に拡大する必要がある。2021年にはまた、柔軟な勤務形態の普及が雇用増および人材獲得の最大のけん引力になると予想される。

グーグル(Google)やフェイスブック(Facebook)、マイクロソフト(Microsoft)といった技術大手らは、在宅勤務の継続を2021年上半期まで実施する方針を2020年末の時点ですでに打ち出している。そのほか、ツイッター(Twitter)は在宅勤務を恒久化する方針を発表した。

▽「仮想労働力」の確保には世界規模での人材発掘が必要

学士号以上の学位を持つ人の失業率は2020年4月の8.2%から10月には4.1%に低下した。特に近年の新卒者やミレニアル世代(1980年代から1990年代中盤、あるいは2000年代初頭までに生まれた人たちでY世代とも呼ばれる)の労働者のあいだで、柔軟な勤務形態が雇用回復の起爆剤になる可能性を示す数値といえる。

企業は、「仮想労働力(virtual workforce)」を雇用対象にすることで、優秀な人材を見つける可能性を広げることができる。そのためには、人材発掘にかける時間を増やすのではなく、世界規模での人材獲得を推進する効率的かつ効果的な基盤システムを整備する必要がある。

▽オンラインでの人材発掘作業を10~15時間から2分に短縮

ジアン氏によると、通常の地理的範囲内だけで週に10時間もの時間を人材発掘に費やしていた会社は、ハイヤーチュアルの人工知能活用の人材発掘と自動化技術によって、ソーシャル・メディアや求人サイト検索時間を従来の10~15時間から2分に短縮できる。その間に45以上のオンライン・プラットフォームを網羅できる、と同氏は話した。

短縮によって得られた時間は、候補人材へのA/Bテスト(二つの選択肢のどちらがよいかを多数質問する調査手法)や人材資源長期計画の策定にあてられる。

採用対象を世界に広げる場合には、人工知能による業務最適化によって、各社は馴染みのない市場で人材を引きつけるための施策に時間を割くこともできる。

▽ソーシャル・メディアがおもな人材発掘場に

ジアン氏によると、2021年は人材発掘のためのソーシャル・メディアの役割りが大きくなると予想される。

ハイヤーチュアルの調査では、フェイスブックやリンクトイン(LinkedIn)、ツイッターが人材のおもな発掘源になると回答した人が6割を超えた。ギットハブ(GitHub)やスタックオーヴァーフロー(StackOverflow)といった技術専門家向けプラットフォームがそれらの主要ソーシャル・メディアに続いた。

人材発掘業者らは、人工知能採用プラットフォームを使うことでソーシャル・メディアでの人材発掘戦略を立てることができる。ハイヤーチュアルのツールはデータ・インテリジェンスを実装しており、各社はソーシャル・メディア上の情報を分析することによって候補者の行動と期待を客観的に理解し、結果的に候補者を絞り込み振り分けにかける時間を短縮できる。

▽ハイヤーチュアル、SAPサクセスファクターズやオラクル・タリオらと競合

ほかの業務と同じように、雇用にもデータ解析は欠かせない。ハイヤーチュアルは、ワークデイ(Workday)やSAPサクセスファクターズ(SuccessFactors)、オラクル・タリオ(Oracle Taleo)、iCIMSといった人材採用データ庫(recruitment data warehouse)からの洞察取得を簡素化する新世代の人工知能人材採用技術を提供する一社でもある。

新型コロナウイルス・パンデミックに振り回された2020年は、何事も不変ではないことを学んだ年でもあった。情報武装は危機的状況を乗り切る手段の一つだ。人材発掘業者や人材採用担当者らは人工知能技術によって、予期せぬ事態が起きても状況を冷静に判断し、変化に柔軟に対応できるようになる、とジアン氏は述べた。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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