豪華なカフェテリアや無料の軽食を福利厚生として重視してきたシリコン・バレー企業らは、新型コロナウイルス・パンデミックによる就業環境の変化に対応すべく、オフィス外でも社員を支援する福利厚生を重視するようになっている。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。
▽在宅勤務常態化を受けて福利厚生が職場外へ
シリコン・バレー企業らはこれまで長年にわたり、激しい人材獲得競争で他社との差別化を図るためにオフィス内の福利厚生を拡充してきた。職場の居心地を良くすることで、社員が長時間勤務をいとわなくなるという効果もあった。
しかし、在宅勤務の広まりと常態化を受けて、社員にとって魅力的に映る福利厚生は変化した。新型コロナウイルス・ワクチンの流通拡大にともなって多くの会社がオフィス業務再開を計画している一方で、福利厚生も見直されつつある。今後は、在宅勤務と職場勤務のハイブリッド・モデルが主流となり、仕事と私生活の均衡がこれまでより重視されるようになる、とみられる。
▽社員が価値を感じる福利厚生に重点
福利厚生の新傾向として浮上しているのは、オフィス外の時間も含めて社員の健康と幸福を支援し、社員に価値を感じてもらえるサービスや制度だ。
たとば、子育てに関する助言や悩みごと相談、財務計画、託児サービスの補助手当て、さらには強制的な有給休暇がある。
求人サイトのインディード(Indeed)が求職者1000人を対象に2020年末に実施した調査では、ほとんどの人にとって仕事と私生活の境い目が恒久的にあいまいになったという見方に43%が同意した。
▽長期的な均衡やコスト対効果に留意することが必要
各社は、職場外福利厚生を長期的に続けていくことがどれだけ現実的かを考える必要があるだろう。在宅勤務と職場勤務、その両方の社員が入り混じるなかで、どういった型の福利厚生にどれだけの経営資源を投じるのかといった配分も複雑な課題だ。
「精神の健康、身体の健康、家族との暮らしという観点から社員を職場外でも支援していくニーズは、今後も継続するだろう」と、エイクロン大学で経営管理学を教えるエリン・マカリウス准教授は話す。「雇用主は長期にわたって実態を追跡し、コスト対効果も計算する必要がある」。
▽フェイスブック、内装設計補助や託児サービス支援を提供
フェイスブックは、2020年5月の時点でほとんどの社員が恒久的に遠隔労働環境に移行するという見通しを明らかにしていた。
同社は最近、自宅での勤務空間の設計コンサルティング・サービスを福利厚生に追加した。従業員たちはそれを利用することで、壁の色や家具の配置、そのほかの内装設計について、内装専門家たちからの助言を無料で受けられる。
フェイスブックはまた、学校と託児施設の閉鎖によって子持ち社員の負担が増大しているのに対応するために託児関連の福利厚生を7月に拡大した。同社は今後もそれを継続する計画だ。
▽福利厚生サービス会社ら、顧客会社を大幅増
その種の福利厚生サービスは社員らのあいだで好評だ。
家族向けの福利厚生サービスを100社以上の顧客会社に提供するサンフランシスコ拠点のクリオ・ラブズ(Cleo Labs)は、パンデミック間に託児サービスの対象を5歳までから12歳までに拡大した。その新サービスには、セラピストや幼児教育専門家との相談も含まれている。2020年中に新たに開拓した顧客会社らの従業員数は計6万人以上に達した。
ピンタレスト(Pinterest)は最近、比較的年長の児童を対象としたクリオ・ラブズのサービスを導入した一社だ。また、セールスフォースもクリオ・ラブズのサービスを 2021年内に従業員らに提供開始する。
そのほか、精神衛生や財務計画、キャリア相談のサービスを提供するモダン・ライフ(Modern Life)は、2020年3月以降、顧客会社の数を2倍に増やした。
▽雑用代行サービス会社、2020年に140社を獲得
一方、パーソナル・アシスタント・サービス(個人的雑用代行サービス)を提供するスクエアード・アウェイ・パートナーズ(Squared Away Partners)は、2020年に新たに140社の顧客会社を獲得した。
スクエアードは、160人のパーソナル・アシスタントを有し、カレンダー(各種の予定や計画)や家計簿を管理したり、カスタマー・サービスに電話をかけるといった所用を代行している。
シリコン・バレー企業らは、スクエアードのサービスを従業員たちに提供することで、日々の暮らしにおけるさまざまの負担を軽減するという福利厚生を提供するようになった。
実際、スクエアードが過去1年間に獲得した新規顧客会社のほとんどは技術会社やベンチャー・キャピタル会社で占められる。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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