小売大手ら、「いま買って支払いはあとで」を推進~ 新興企業と提携し次世代の消費層の取り込みを図る

百貨店大手のメイシーズやニーマン・マーカス、アパレル小売チェーン大手のギャップらは、新たなあと払い方式を導入して若い顧客層を引き付けようとしている。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、それらの小売大手は、消費者向け金融サービス新興企業と提携することで、次世代の主要消費層の取り込みをねらっている。

▽オンライン購入者向けフィンテックを採用

それらの小売大手はこれまで、自社ブランドのクレジット・カードを発行して、リヴォルビング払いを必要とする顧客のニーズに応えてきた。実際、クレジット・カード事業はそういった小売大手らの収入の大きな部分を構成している。メイシーズ(Macy’s)では今年度の営業利益すべてをクレジット・カード事業で計上する見通しだ。

メイシーズやニーマン・マーカス(Neiman Marcus)、ギャップ(Gap)がここ数ヵ月以内に導入したのは、クラーナ・バンク(Klarna Bank)やアファーム・ホールディングス(Affirm Holdings)、アフターペイ(Afterpay)といった新興のオンライン購入者向け金融サービス提供会社が提供する技術だ。小売大手らがクレジット・カード・ソリューションを取り入れる傾向は近年に強まっている。

▽分割払いやデジタル販促、オンライン即時信用審査を提供

ストックホルム拠点のクラーナ・バンクは、消費者がいつでもどこでも簡単にモバイル購入できる分割払いサービスをモバイル・アプリケーションによって提供し、小売会社にはそれに付随する決済サービスを提供する。特売情報を消費者に周知させるオンライン販促から分割払い決済処理まで引き受けるのが同社の特徴だ。

サンフランシスコ拠点のアファームは、オフラインとオンラインの販路融合に対応した柔軟性の高い分割払い購入サービスを消費者に提供し、小売業者には、標的販促や個々の購入者に適した代金返済選択肢の設定を可能にするアダプティヴ・チェックアウトという技術ソリューション、そして消費者への特典提示といったサービスを提供する。

かたやメルボルン拠点のアフターペイは、2週間ごとの4回の分割払いを無利子で購入者に提供するサービスをオンライン提供している。消費者がオンライン買い物時に同社のサービスを選ぶと、人工知能基盤の信用審査エンジンによって即判断し、同サービスを利用できるかどうかがすぐに判明する。同社は、同サービスを採用する業界別のソリューションを提供し、販売機会の増強を支援する。

▽小売店側にはリスクがともなう

小売会社による自社ブランドのクレジット・カード事業では一般に、リヴォルビング払いを選択した消費者から利息や手数料の利益を挙げることができるが、それらの新型あと払い決済サービスでは小売店側が手数料を負担する。

自社のクレジット・カード事業を部分的に侵食する可能性があるため、新興企業のあと払い決済サービスの採用にはリスクがともなう。しかし、新たな消費者層を取り込めるという魅力のほうが潜在的なコストよりも大きい、と小売業界の幹部らは説明している。

▽あと払い利用者の45%は40歳未満

メイシーズは2020年10月にクラーナに投資し、クラーナのあと払いサービスを顧客に提供することで合意した。メイシーズは、自社ブランドのクレジット・カード事業をシティグループに2005年に売却したが、現在も利益分配を受けている。また、自社の銀行サービス事業も持っており、各種のクレジット販促サービスを提供している。

メイシーズのジェフ・ゲネッテCEOによると、クラーナのサービスを使って購入する顧客の40%はメイシーズにとって新規顧客で、45%が40歳未満だ。一方、既存顧客のうち40歳未満の占める割り合いは25%強だ。クラーナ・サービス経由の顧客をゆくゆくは自社ブランドのクレジット・カード顧客に変えていくのが同社の目標だ、とゲネッテ氏は話した。

▽若い世代ほどあと払い購入を選ぶ

米国では比較的新しいそれらのあと払いサービスは今後成長するとみられる。決済処理サービス会社のワールドペイ・グループ(Worldpay Group)は、北米のイーコマース決済に占めるあと払いの割り合いが2020年の1.6%から2024年には4.5%に達すると予想する。

また、金融コンサルティング会社のコーナーストーン・アドバイザーズ・オブ・アリゾナ(Cornerstone Advisors of Arizona)によると、ミレニアル世代(1980年代から 1990年代中盤、あるいは2000年代初頭までに生まれた世代でY世代とも呼ばれる)のおよそ5人に一人が、2020年にあと払いサービスを利用し、X世代(1960年代前半および中盤から1980年代初期に生まれた世代で団塊世代とも呼ばれる)の利用者のほぼ2倍の割り合いを占めた。ベビー・ブーマー(団塊)世代では、あと払いを利用した人はほとんどいなかった。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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