クリヤー、「ワクチン・パスポート」として台頭~ 空港セキュリティー・アプリケーションのコーヴィッド版に商機

米国内の60ヵ所以上の競技場や催事会場、公的場所は、来場者たちのコーヴィッド19(COVID-19)関連状態を即時確認できるようにするために、モバイル・セキュリティー確認アプリケーション「クリヤー(Clear)」を採用し始めている。ロイター通信によると、クリヤーは、現場の感染予防とその確認をデジタル・ソリューションによって簡単に実行できるようにことで、多くの事業や会社にとって経済活動再開本格化の重要な解決策になる可能性がある。

▽ワクチン接種状況を簡単に即時確認

クリヤーは、ニューヨーク市拠点の新興企業アルクリヤー(Alclear)が開発したアプリケーション。もともとは、9/11(セプテンバー・イレヴンス、米同時多発テロ)によって強まったセキュリティー需要に商機があるという共同創設者らの事業案を受けて、おもに空港向けの利用者生体認証アプリケーションとして市場投入された。

アルクリヤーは、それをコーヴィッド19に応用し、ワクチン接種状況を即時確認できるようにした。

同社は、クリヤーを2019年9月に市場投入した。新型コロナウイルスとは関係なく、セキュリティー強化目的の生体認証アプリケーションとして設計された。同社はその後、パンデミックを受けてデジタル・ヘルス・パス機能を追加した。

▽大リーグ球団らが早速採用

大リーグ球団のサンフランシスコ・ジャイアンツやニューヨーク・メッツ、そのほか数々の競技場や会社、催事施設、大型商業施設らは、来場者のワクチン接種完了いかんやウイルス感染検査結果をクリヤーによって簡単かつ瞬時に確認することで、感染リスクを最小限化しようとしている。

それらの公的場所は、紙の証明書の提示も受け付けているが、クリヤーのダウンロードを奨励している。利用者のスマートフォンに表示されるデジタル証明を携行型端末で読み取るだけで、当該人物のワクチン接種済みまたはウイルス検査の陰性結果を非接触式で確認できる。

▽プライバシー侵害懸念はつきもの

ただ、プライバシー擁護団体のエレクトリック・フロンティア財団(Electronic Frontier Foundation)は、「ワクチン・パスポート」と俗に呼ばれるアプリケーション群のプライバシー侵害懸念を払拭できない、と警鐘を鳴らしている。

同財団によると、クリヤーや、そのほかのいわゆるデジタル・ヘルス・パス(またはデジタル・ヘルス・パスポート)のたぐいは、繊細な個人情報を恒久的に保存し、消費者行動追跡に転用する可能性がある。

アルクリヤーはそれに関し、自身の健康記録を管理できるのは本人だけで、アルクリヤーには操作できない、と反論した。

▽年間2.2万件のダウンロード数が月間14.2万件に

多くの事業が物理的なIDや入場券、クレジット・カードから顔認証や指紋認証、そのほかのデジタル認証に移行するなか、クリヤーは、パンデミック収束後の経済活動再開本格化を受けて大きな商機をつかもうとしている。

新型コロナウイルス関連の健康確認アプリケーションはすでにいくつもあるが、クリヤーは、ユナイテッド航空やラスベガスのカジノ・ホテル大手ヴェネチアン、そのほか複数の大手らに採用されたことで、先頭を走るアプリケーションの一つに位置づけられるようになった。

パンデミック以前におけるクリヤーのダウンロード件数は年間2万件強だったが、2021年4月には1ヵ月間だけで14万件以上を記録した。

クリヤーのダウンロード件数

2019年 ■■■■■■■■■ 2万2000
2020年 ■■■■■■■■■■■■■■■ 7万9000
2021年1月 ■■■■■■■■■■ 2万8000
2021年2月 ■■■■■■■■■■■ 3万5000
2021年3月 ■■■■■■■■■■■■■■■■■ 9万4000
2021年4月 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 14万2000

▽ニューヨーク州のエクシオール・パスを追い抜くか

同市場で先行するおもなアプリケーションにはエクシオール・パス(Excelsior Pass)がある。エクシオールは、ニューヨーク州政府がIBMと共同開発して数週間前に提供開始したデジタル・ヘルス・パスだ。

エクシオールは、4月の1ヵ月間に計50万件のワクチン接種完了証明を実行した。エクシオールに連動してそれを確認する事業社向けアプリケーションのダウンロード数は4万を超えた。

2021年に入ってからのクリヤーのダウンロード増加がこのまま加速すれば、クリヤーがエクシオールを追い越す可能性もある。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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