2020年以降、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて上場した新興の電気自動車(EV)メーカー5社(ニコラ、フィスカー、ローズタウン・モーターズ、カヌー、アライバル)は、ピーク時の時価総額が合わせて600億ドルに達したものの、ヘッジファンドによる空売り攻勢、経営の混乱、業績の問題などでその後は400億ドル以上低下している。
ブルームバーグ通信によると、SPACを介した上場は投資家に前向きな見通しを提供でき、EV企業への関心を引く効果があったが、評価額の低下はSPACブームのリスクを示している。
■ニコラ
20年6月にナスダック上場した数日後、株価に株式総額を掛けた時価総額はフォードに肩を並べる290億ドル近くに達したが、ブルームバーグはその数年前に創設者のトレバー・ミルトン会長が最初の電動トラックの性能を誇張していたと報道。小規模な空売り会社ヒンデンバーグ・リサーチがこれに注目し、投資家を欺いていると非難する報告書を公表した。
これを受けて証券取引委員会(SEC)が調査を開始し、ミルトン氏は会長を辞任した。同社は21年初め、電動セミトラックの生産台数予想を従来の6分の1の100台へと大幅下方修正し、株価は4月に10ドルを割り込んだ。
■フィスカー
ニコラ上場の1カ月後にSPAC上場を発表した。市場価値は21年2月に約80億ドルに達したが、5月半ばには30億ドル未満に低下した。原因は他のEVメーカーほど明確ではなく、投資家が既存のメーカーのEV開発計画の方を好感し始めたことが影響しているように見える。
■ローズタウン・モーターズ
20年6月、ゼネラル・モーターズ(GM)から引き継いだオハイオ州の工場で電動トラック「エンデュアランス」を発表した当時はトランプ前政権の厚い支持を受け、その後6週間以内に合併相手のSPACを見つけたが、同社が公表した受注数は拘束力のない注文で構成され「投資家に誤解を招いた」とヒンデンバーグから攻撃された。SECはこれについても調査中で、同社の時価総額は現在12億ドルと、2月中旬の4分の1以下に下がっている。
■カヌー
20年初めに韓国・現代自動車のEV開発を支援する契約を結び、8月に上場を発表した。21年1月にはアップルともEV開発に関して協議したと報じられた。しかし今はそうした勢いが消え、3月には事業計画を変更して、他社向けのエンジニアリング・サービスや、初期は投資家への売り込みの1つだったサブスクリプション方式の事業を重視しない方針を決定。最高財務責任者(CFO)などの経営幹部は交代し、1年以上前に発覚した財務管理の重大な問題には対処しておらず、4月には共同創設者の1人がCEOを辞任した。
■アライバル
3月にSPAC上場する前から、ブラックロック、現代自、UPSといった有名な支援者を集めていた。最近は配車サービス専用のEV開発でウーバー・テクノロジーズと提携すると発表した。株価はその発表直後の高値を維持していないが、5社の中では最も評価が高い105億ドルとなっている。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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