保険業界では業務デジタル化が遅れ気味だが、昨今、デジタル・ソリューション群の活用が加速している。保険業界でのデジタル化が遅い主因は、たとえば、自動車事故や器物損壊、被災時の被害が起きた際に、その状態や状況を精査して損害額を算出するために調査員を現場に派遣しなければならないことだ。
ベンチャービート誌によると、保険業界向けデジタル・ソリューション新興企業トラクタブル(Tractable)は、機械視認(computer vision)技術によってその障壁を取り除くことで、保険業界の損害規模査定および保険申請審査の過程を大幅に合理化する。
同社は、新型コロナウイルス・パンデミックによる近接接触回避や遠隔労働によってサービス業務の仮想化需要が一気に高まったことから、過去24ヵ月間に600%以上の増収を記録した。
そのトラクタブルは6月16日、インサイト・パートナーズとジョージアン・パートナーズが主導した資金調達で総額6000万ドルを集め、企業評価額10億ドルを突破したことを明らかにした。トラクタブルは、今回の資金調達によって累計1億1500万ドルを集めたことになる。
同社は、被保険者(消費者、保険顧客)がスマートフォン・カメラを使って撮影した損壊部分写真を人工知能基盤の機械視認技術で即時分析し、その分析結果を保険会社らに即時転送する。保険会社らはそれをもとに、たとえば車の場合、修理可能かどうか、修理可能ならいくらかかるかをすぐに評価する。
保険会社向け人工知能ソリューション新興企業は近年に増えている。おもな新興企業には、コーヴァス(Corvus)やハックルベリー(Huckleberry)、シフト・テクノロジー(Shift Technology)がある。
コーヴァスは、リスク分析に特化した人工知能ソリューションを保険会社に提供し、ハックルベリーは、小規模会社と保険商品をオンラインで結びつけるプラットフォームを運営し、シフト・テクノロジーは、保険詐欺の検出および防止を支援する機械学習ソリューションを提供している。
トラクタブルは、今回の調達資金を事故後回復サービス(被保険者が事故後に早くもとに戻れるようにする支援)の拡充や、機械視認技術を中古車販売に応用する機能拡充とその販促に投じる計画だ。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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