指触操作やキオスク、ヘッドレス・コマース、ドローン、配達ロボットは、小売会社やレストランの現在と未来を決定づける技術応用だ。人員不足や業務効率化の圧力がその背景にある。専門家たちは、両業界において自動化の動きがこれからさらに強まり、その需要に応えるソリューション群の開発に注力する新興企業らが成長する、と予想する。クランチベイス誌が報じた。
▽目的特化型に照準するウィングス
マサチューセッツ州拠点のロボティクス新興企業ウィングス(Wings)は、心理学的要素に照準した研究室を開設し、レストラン向けの自動化システムを開発した。
「われわれは、研究の結果、厨房内で場所を取らないロボティクスを開発した」と同社のヘイサム・アル=ビーク創設者兼CEOは話す。
同社は、目的特化型のロボティクスに重点を置いている。天井から下に伸びる機械腕が料理人の手を一切必要とせずに注文食をすばやく調理するといった自動化システムが同社の典型的な製品だ。
▽取り残された自動化分野は厨房だけ
アル=ビーク氏は、外食サービスの近未来について、「分散型かつ自己組織化ロボティック・システムの独特な集合体」になる、とみている。
食事サービス市場では近年に、店内サービスやドライブスルー、オンライン注文による持ち帰り、オンライン注文による出前といった各種の消費手段が普及したが、食事をつくる過程は何も変わっていない、とアル=ビーク氏は指摘する。
レストランに残された自動化または合理化の部分は厨房にある、というのが同氏の考えだ。
▽低賃金という慢性的要因にパンデミックが重なる
外食業界ではここ何年間か人員不足が課題となっている。低賃金という慢性的要因もあるが、最近については新型コロナウイルス・パンデミックも主因だ。
パンデミックによる大打撃を受けた過去1年半については、非常に寛大な失業保険や政府給付金によって、働きに出るより無職のままで家にこもる人が増えた。そのため、制限つきながらも営業再開したレストランでは人材確保に苦労を強いられている。
米国では、計3200ドル(1回目は1200ドル、2回目は600ドル、3回目は1400ドル)の給付金に加え、一般に週あたり600ドルの失業保険が給付され、パンデミック中には、通常なら半年間の失業保険給付期間が大幅に延長された。そのため、低賃金労働者らの一部は、職場復帰や再就職するよりも失業保険をもらい続けるほうが高収入になる。
▽小売業界で進む「ヘッドレス」化
一方、ヘッドレス・コマースでも自動化が急加速している。
ヘッドレス・コマースとは、文字通りに解釈すれば「頭のない商取引」を意味する。小売業界においてヘッドレスは、フロントとバックエンドを切り離して運営するプラットフォームを指す。
たとえば、API(application programming interface)を活用した機能連携設計によって受注情報をバックエンドに自動送信できるようにし、バックエンドでの処理と小売現場の運営を分離することでバックエンド・システムに左右されることなくそれぞれの改善や改良を自由に実行できるようにする。
サンフランシスコ拠点の新興企業ファスト(Fast)のドーム・ホーランド共同創設者兼CEOは、小売業界においてバック・オフィス業務の自動化が加速するとともに、オンライン買い物と同じような「魔法のような支払い体験」を消費者に提供するようになっている、と話す。
▽「ヘッドレス支払いはことし最大の変化」
「小売業界とレストラン業界はパンデミックによって激変した」とホーランド氏は指摘する。
「レストランは、来店者たちにQRコードをスキャンさせることでメニューと注文をオンライン化した」「それによって店員と来店者の物理的接触を避けることを可能にした」。
似たようなことは小売店でも起きている。「多くの商店は、デジタル注文やオンライン決済を来店者に提供するようになった」「小売業界にとってヘッドレス支払いはおそらくことし最大の変化となる」とホーランド氏は話す。
▽ウェブサイトで検索せずに商品特定および購入を簡単に
ファストは、ファスト・チェックアウトという機能を小売会社向けに提供している。たとえば、消費者がテレビで見たブレスレットを買いたいと思った際にすぐに買えるようにするために、ファスト・チェックアウト・ボタンをモバイル・アプリケーションに組み込むことで、クリックひとつで簡単に購入できるようにする。
消費者は同機能を使うことで、ウェブサイトを検索することなく、また、外に一歩も出ることなく、気に入った商品をすぐに買える。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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