米送油管運営最大手コロニアル・パイプライン(Colonial Pipeline)のランサムウェア攻撃被害に際し、同社がハッカーらに払った身代金の半分以上が回収された事実は、今後のサイバー攻撃と防衛に多くの示唆をもたらしている。
コロニアル・パイプラインは75ビットコインの身代金を払った。米ドルに換算して約400万ドルだ(多くの記事では440万ドルと報じられた。換算レートが影響していると思われる)。米連邦捜査局(FBI)はその後、ハッカーらとそのデジタル財布を追跡し、その半分以上を押収した。
ベンチャービート誌によると、同件をめぐっては、コロニアル・パイプラインにどれだけの落ち度があったかについて多く語られているが、身代金の半分以上がのちに回収された事実は、ハッカー側にも落ち度があったことを示すものだ。また、FBIがどのようにして身代金を取り戻せたのかという問いに答える記事は非常に少ない。
暗号通貨は匿名で取り引きできるものと認識されがちだが、それはかならずしも事実ではない。ビットコインは偽名で取り引きできる通貨であって、何らかの匿名性がもたらされるものの、公開台帳を精査すれば送信者と受信者についての情報がかなりわかる。FBIは、それを足ががりに複数のハッカーとデジタル財布を追跡し、そのうちの一つの認証語を割り出したことで当該アカウントへのアクセスを可能に、ビットコインを差し押さえた。
暗号通貨のなかには、ほぼ完全に匿名で取り引きできるものもある。モネロ(Monero)がその一例だ。モネロは、送信者や受信者、金額といった取り引き情報は公開されておらず、流動性もきわめて高く、ほぼすべての取り引き所で扱われている。
コロニアル・パイプラインへの攻撃者がビットコインで身代金を受け取ることの危険性を知らなかったとは考えにくく、むしろ取り引きが多少追跡されたとしてもかまわないと考えたのだろうと思われる。ランサムウェア攻撃者らは一般に、ロシアや中国、北朝鮮、イランのように欧米諸国とのあいだで犯罪人引き渡し条約を結んでいない国にいることが多いためだ。
犯罪者らは今回、ビットコインを使うことで所在地情報をある程度わからせようとした可能性もある。
いずれにしても、攻撃者らは、身代金を差し押さえられたことで、捜査当局のサイバー犯罪摘発能力について何らかを学んだだろう。そうした知識は、今後の犯罪のさらなる高度化につながると予想される。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
2024年7月25日 アメリカ発ニュース, 環境ビジネス, 米国ビジネス, 自動車関連
EV時代もガソリンスタンドは重要拠点に
-
2024年7月22日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
ビザ、生成人工知能による不正防止技術を新たに導入 〜 総額100億ドルの投資で年間400億ドルの防止効果
-
ジョー・バイデン大統領、出馬を断念 〜 身内や主要献金業界からの説得についに応じる
-
2024年7月18日 アメリカ発ニュース, 世界のニュース, 米国ビジネス
マレーシア、アジアのデータ・センター拠点として台頭 〜 クラウドと人工知能による需要増で米国からの投資を呼び込む
-
2024年7月17日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
AT&Tのデータ侵害、スノーフレイクの巻き添えに 〜 2.4億人の携帯電話顧客と仮想通信網顧客会社が被害に
-
2024年7月16日 アメリカ発ニュース
米技術業界重鎮ら、トランプ氏の激励をあいついで表明 〜 暗殺未遂速報を受けて続々と投稿
-
ターゲットとショッピファイが提携 〜 ターゲットのオンラインいちばに中小の小売業者らが出店可能に
-
人工知能銘柄が今後10年の株式市場を動かす 〜 シスコの元CEOのベンチャー・キャピタリストが予想
-
2024年7月8日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
スマート包帯の研究&開発が前進 〜 傷口の状態を遠隔追跡、包帯から投薬や電気刺激を可能に
-
飲食店で印刷メニューが復活~QRコード不評で