米国内では、デジタル・ヘルス・パス(新型コロナウイルス・ワクチン接種歴やウイルス感染結果を記録してスマートフォンで簡単に表示できるようにするモバイル・アプリケーション)がゆっくりながらも浸透しつつあるが、多くの州がその正式導入に躊躇している。AP通信によると、同アプリケーションを開発して市場投入した州でもその活用は事業主に委ねられており、自治体としては制度として運用していない。
▽市民の大部分が使わなければ意味なし
現在、全米各地の都市では、消費者らがレストランやバー、そのほかの娯楽施設に入る際に、コーヴィッド19(COVID-19)ワクチン接種済みを証明することを客に求める事業主が散見されるが、ニューヨーク市では事業主の自由意志によって運用されており、市当局の方針ではない。
パンデミックで大打撃を受けた全米各地の商業者らはできるだけ早く正常化したいと切望しているが、デジタル・ヘルス・パスポート(ワクチン接種済み証明アプリケーション)の提示を来客に求めることに消極的だ。また、一般大衆や各地の政治家らは同件について消極的だ。
実際、ワクチン接種済み証明をスマートフォンで表示するアプリケーションを構築した州よりはるかに多くの州がデジタル・ワクチン接種証明の使用を禁じている。その背景には、デジタル・ヘルス・パスを大多数の市民が日常的に使わなければ、それは機能しないのと同じという考え方がある。
▽制度化した州はハワイだけ
ニューヨーク州の場合、エクセルシオール・パス(Excelsior Pass)という州電子財布を構築し、ワクチン接種済みを簡単に証明できるモバイル・アプリケーションを出しているが、州政府はその利用を義務化または制度化していない。ルイジアナ州も同様の姿勢だ。
6月初旬には、カリフォルニアがニューヨークとルイジアナに次いでワクチン接種済み証明アプリケーションを導入した三つ目の州になった。いずれの州も、そのデジタル確認システムの利用を義務化しておらず、その活用はそれぞれの場所や催事、商業の責任者が自由に決められる。
現時点では、何らかのワクチン接種済み証明(デジタル・ヘルス・パス)を制度化した唯一の州はハワイだ。ハワイでは、ハワイ・ワクチン接種済み書類のPDFか写真を州システムにアップロードすることを旅行者に義務づけ、あるいは、コーヴィッド19検査の陰性結果をハワイ到着前に証明することを義務づけている。それに準拠しない場合は10日間の検疫隔離が規定されている。
▽18州では州の対策としての導入を禁止
その一方で、共和党の知事か、共和党が州議会多数党を占める少なくとも18の州では、そういったワクチン・パスポートの構築または活用を禁じている。ただ、雇用主がその種のデジタル証明アプリケーションを独自に開発して自身の従業員らに適用することは自由だ。
ルイジアナの場合、これまでに10万5000人がデジタル・ヘルス・パスを起動させた。その割り合いは、デジタル免許所有者の14%で、有効免許証を持つ州人口310万人のわずか4%未満だ。デジタル・ヘルス・パスを制度として運用するには普及率が低すぎるため実質的に意味がないというのが実情だ。
▽ワクチン接種完了者らにQRコードが提供される見込み
ただ、近い将来に事情が変わる可能性はある。ほとんどの州でワクチン接種完了率が70~80%を超えており、その割り合いは近く90%を超えることが確実だ。
それと同時に、デジタル・ヘルス・パスをスマートフォンにダウンロードしない人でも、接種済みの人たちの多くは、ワクチン接種デジタル記録にアクセスできるようになる。
ワクチン接種完了者たちは、正確かつくわしい接種記録を収めたQRコードを自動的に受け取ることができるうようになり、実質的にはそのQRコードがデジタル・ヘルス・パスと同じ機能を果たすことになるとみられる。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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