ブロックチェーン技術は暗号通貨の取り引き管理のために開発されたが、金融以外の分野に応用され始めており、その動きは今後さらに顕著になることが確実だ。フォーブス誌は、金融以外でのブロックチェーン技術活用法を16人の技術専門家たちに聞き、その内容を報じた。
1.供給網管理
シンディー・ジョードン氏、IFS
ブロックチェーンは供給網管理にかなりの規模で導入されつつある。ブロックチェーンの活用は、監査証跡を確立して、原材料や製品の遡及追跡を高め、規制対応業務の効率化を図れる。また、問題や支障が生じた場合にすばやく特定して、対応策を見つけるのにも役立つ。
2.オンライン投票
ニコラス・デュポン氏、サイボーグ(Cyborg)
選挙の投票をオンラインで安全に実施するのにブロックチェーンが使われるようになる可能性がある。全国規模で数百万人という有権者の投じる票を安全に追跡および管理するという点で、ブロックチェーンほどの利便性と信頼性を有する技術はほかにあまり存在しない。
3.デジタル身分証
ナドヤ・クナイシュ氏、a1qa
ブロックチェーンの最大の利点は高いセキュリティーであることから、デジタル身分証として強みを発揮する。パスポートや運転免許証、出生証明書、社会保障番号といった重要な情報をブロックチェーンで保管すれば、安全性を担保できると同時に必要時には簡単に提示できるようになる。
4.ワクチン・パスポート
エド・アダムズ氏、セキュリティー・イノヴェーション(Security Innovation)
ワクチン・パスポート(デジタル・ヘルス・パス)も身分証の一種と言え、とりわけ最近では大きな関心事だ。プライバシーを守りながら越境移動に際して信頼できる証拠(ワクチン接種完了を示すデジタル証明)を提示するという点で、ワクチン・パスポートはブロックチェーンの理想的な使い道だ。
5.分散型のマーケットプレイス
クリストファー・ヤン氏、コーポレート・トラベル・マネジメント(CorporateTravel Management)
ブロックチェーンは、中央化されていないマーケットプレイスを発展させるのに役立つ。広告やリサーチの目的で個人情報を交換し、それに際する金銭授受を安全かつ確実に可能にする。売り手は安全にデータを共有し、買い手は洞察を手に入れられるようになる。
6.ロイヤルティー制度
ジョナサン・ホイルズ氏、パーク・ラブズ(Perk Labs)
取り引きと決済を効率的に管理するブロックチェーンの特長は、ロイヤルティー制度(顧客向け特典制度)の管理にも応用できる。企業は管理コストを下げ、不正やエラーを排除できるようになる。顧客にとっては、デジタル財布から簡単にアクセスできる制度になる。紙製カードにハンコを押すというロイヤルティー制度はかなり前からデジタル化されているが、今後はその次段階のブロックチェーンでの管理に進化する可能性がある。
7.医療情報管理
ローマン・タラノフ氏、ルビー・ラブズ(Ruby Labs)
ブロックチェーンは、医療業界に革命を起こす可能性がある。医師側は、個々の患者の個人データにもとづいて治療法を決められるようになる。API(applicationprogramming interface)を介して医療機関のあいだで患者情報を安全に交換するのにも役立つ。
8.医薬品の在庫管理
パメラ・スペンス氏、EY
新型コロナウイルス感染症の発生によって医療品や医薬品の供給網に大きな負荷がかかった。医療品や医薬品の流通では、安全性と確実性がきわめて重要だ。そういった状況でこそブロックチェーンが価値を発揮する。在庫や流通全般をブロックチェーンで管理すれば、利用側はどこで何を入手できるかを即座に知ることが可能となり、提供側は市場全体を見わたして足りていないもの特定できる。
9.出所の確認
フィリップ・クウェード氏、フォーティネット(Fortinet)
ブロックチェーンは、インターネット上の情報の真偽を確認するのに役立つ。偽情報と信頼できる情報源を見分けることが非常に重要になっていることから、そういった問題を解決するために暗号法による認証というブロックチェーンの基本概念を応用できるだろう。
10.反復可能の業務処理過程
アズマス・パシャ氏、パラダイム・テクノロジー(Paradigm Technology)
ブロックチェーンが真に市場を拡大するには、各社における業務処理過程で使われていく必要がある。さまざまの取り引き処理や事業資源管理にブロックチェーンを統合することで、高速で信頼性の高い業務過程が実現する。オープン・ソースやクラウドソース(crowdsource)の技術が、この種の用途を開拓していくだろう。
11.学位や学歴の管理
マーク・キャメロン氏、W3.Digital
教育分野でブロックチェーンが使われ始めているのが、学歴の管理だ。学位や卒業証書を単に管理するのではなく、受けた教育を細かく分類して、専門知識の分野や主題を示せるようにするものだ。この種の情報は真偽を確認できなければならないことから、セキュリティー性にすぐれたブロックチェーンが威力を発揮する。
12.情報共有
レナ・クリスティーナ・タバタ氏、シェアスマート(ShareSmart)
ブロックチェーンは、情報を送受信する作業を大幅に減らせる可能性がある。一部の情報交換において郵送やファックスがいまだに使われる理由は、現行のデジタル手段では偽造が起こりやすいためだ。ブロックチェーンは一つのブロックを変更するだけでも連結したブロックの確認が必要になるため、デジタルでの情報交換の安全性を高める。
13.身元情報の窃盗防止
カルヴァン・ローズ氏、IPプラス・コンサルティング(IP-Plus Consulting)
ブロックチェーンは身分情報の管理を進化させる。顧客と従業員の両方をすばやく認証して、詐欺や身分情報窃盗の防止、さらにはサイバーセキュリティーの強化にも役立つだろう。
14.IoTのセキュリティー
トーマス・グリフィン氏、オプトインモンスター(OptinMonster)
IoT装置のセキュリティー管理にブロックチェーンが使われていくと予想される。IoT装置にハッカーが簡単に侵入できることは周知の事実であり、会社にとっても消費者にとっても懸念の原因となっている。IoTデータをブロックチェーンで管理すれば、IoT接続網での情報セキュリティーを高めることができる。
15.公益サービスの管理
ディーパク・ガーグ氏、スマート・エネルギー・ウォーター(Smart EnergyWater)
クリーン・エネルギー業界にブロックチェーンが導入されつつある。P2P(peer-to-peer)でのエネルギー取り引きを可能にして、消費者をプロスーマー(生産者であり、かつ消費者でもある人)に変えている。このような暗号通貨以外のブロックチェーンの用途は、今後10~20年間に実現し、特に公益業界は大きな恩恵を享受するだろう。
16.国際取り引き
アマンディープ・ミドハ氏、BEC
国際的な取り引きにおいては、信頼できる相手かどうかを確認するための過程が無数に存在する。輸出入の注文書や船荷証券、船積み送り状は、そのための手続きだ。それらをすべてブロックチェーンで置き換えれば、手続きややり取りを劇的に簡便化かつ効率化、低コスト化、そして安全化できる。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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