複数の技術大手らは、より柔軟な勤務体制を従業員らに提供する競合他社が自社に大きなリスクをもたらす可能性があることを認めている。CNBCによると、人材獲得競争が非常に激しい技術業界では、優秀な人材を引きつける要素の一つが従来なら本社の設備だったが、それがいまでは、働き方を選べる柔軟性に移行している。
▽アマゾンとピンタレスト、インテル、ペイパルが初めて言及
アマゾン(Amazon)とピンタレスト(Pinterest)、インテル(Intel)、ペイパル(PayPal)の4社は、米国証券取引委員会(SEC)に最近提出した年次報告書のなかの「危険因子(Risk Factors)」の部分で、労働環境の変化が新たな労働力の確保や従業員の維持に影響する可能性がある、と初めて言及した。
多くの技術大手では、コーヴィッド19(Covid-19)パンデミックが始まってから2年が経過するいま、ほぼ完全な遠隔労働を続けており、従業員らの職場復帰をいつ再開すべきか、また、全従業員が同じ事務所に戻ることにともなうリスクを評価している。
机仕事の従業員のなかには、事務所再開を望む人もいれば、恒久的または半恒久的な遠隔勤務を望む人もいる。また、雇用側の大部分はほとんどの従業員に出社再開を望む一方で、従業員の大部分は遠隔勤務の継続を求めている。
▽4社の報告内容の概略
上述技術大手4社は、勤務体制と事業成長、競争力に関する危険要因として、それぞれ次のように報告した。
1)アマゾン:現在および将来の職場環境に関する変更は、従業員のニーズや期待に沿わない可能性があるほか、他社の方針と比較して好ましくないと認識される可能性があり、有能な人材の雇用と維持に悪影響をおよぼす可能性がある。
2)ピンタレスト:われわれの将来の事業戦略と従業員の受け入れ、職能訓練、人材育成、人材定着に関する継続的な取り組みは成功しない可能性がある。さらに、われわれの勤務体制が、既存および将来の従業員のニーズを満たさない可能性は否定できず、従業員らが他社の提供する働き方を好む可能性もある。
3)インテル:技術人材を求める競合他社たちは、われわれの従業員の採用をつねにねらっている。パンデミックによって一気に浸透した遠隔労働体制は、人材獲得競争をさらに激化させているため、より魅力的な柔軟勤務環境を整備する競合社らに人材を奪われる可能性が高まっている。
4)ペイパル:遠隔労働であれ出勤であれ、優秀かつ多種多様の主要人材をわれわれが発掘または獲得、育成、維持できない場合、または、従業員の安全確保や健康優先、生産性向上にわれわれの勤務体制が対応できない場合、われわれは事業や成長、競争力を犠牲にする可能性がある。
▽物理的本社を持たない「遠隔労働優先」の会社も登場
メタ・プラットフォームス(旧フェイスブック)やツイッター、ショッピファイといったインターネット大手らは、遠隔労働を標準化する方針を何ヵ月か前に打ち出している。
また、ドロップボックスやアトラシアンは、集約型キャンパスという従来の概念を捨てて、従業員たちがあちこちに分散して働く衛星勤務を認めている。そのほか、2021年に上場したばかりのコインベイスやギルラブハシコープは、中心的キャンパスを持ちながらも、正式の本社を持たず、「遠隔労働優先」体制を標榜している。
そのため、技術系従業員らは、働き方に関して非常に柔軟性のあるさまざまの選択肢を得るようになり、どのような働き方を認める会社なのかを吟味して勤務先を選ぶようになった。
グーグルやアマゾン、アップルといった巨大技術会社らは、本社設備に巨額をかけて無料の食事や仮眠室、瞑想室、運動部屋、遊び場といった職場環境の特典を提供してきたが、いまやそういった特典は意味をそれほど持たなくなった。
▽ハイブリッドなら受け入れるとい姿勢が主流化か
技術大手らは、遠隔労働を基本的体制と位置づけることに消極的だが、部分的に定着させることには積極的だ。
アマゾンのアンディー・ジェシーCEOは、「パンデミック後の世界では、ハイブリッド(遠隔と出社の混合勤務)がもっとも現実的な取り組み方になるだろう」「従業員らが勤務時間の100%を会社で働くことはないだろう」と述べた。
マイクロソフトでも、ハイブリッドを基本的な勤務体制として位置づける方針を打ち出している。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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