ロシアは、ウクライナ侵攻にさきがけて大規模のサイバー攻撃をしかけたが、ウクライナの通信システムはこれまでのところ、広範には不具合を起こしていない。ウクライナのゼレンスキー大統領を筆頭に、閣僚や一般市民、報道関係者たちの情報発信に支障はほとんどみられない。
ベンチャービート誌によると、ウクライナのデジタル変革担当次官アレックス・ボルンヤコフ氏は先日、テッククランチ誌の取材に応じ、ロシアによるサイバー攻撃が「想像を絶する」規模にもかかわらず、ウクライナの通信システムが機能停止していない理由として、「プーチン大統領の誤算」を挙げた。
「(ロシア側は)短期に簡単にかたづくと考えていたため、そもそも(通信システムを破壊する必要が)なかったと思ったのだろう。街にやすやすと入って、おもな広場に停留し、あとは祝福するだけだと考えていた」と、ボルンヤコフ氏は語った。
業界関係者の多くも同氏の見方に賛同している。ロシアがウクライナのクリミア半島を不当占拠した2014年3月の侵攻と同じように簡単に制圧できる、とロシアのプーチン大統領は高をくくっていた可能性がある。
ロシア政府がウクライナ侵攻から2日目の2月26日に誤ってウェブサイトに載せてすぐに削除した勝利宣言の予定稿がそれを物語っている。
「社会基盤に対する物理的攻撃とサイバー攻撃がこれまでのところ限定的であるという事実は、能力の問題ではないことを示唆している」と、供給網向けセキュリティー技術を提供するアドルス・テクノロジー(aDolus Technology)のエリック・バイヤーズ最高技術責任者は話す。「これはロシア司令部の意図的な決定であって、能力の限界ではないとみなすべきだ」。
ただ、今後も通信システムへの攻撃がないというわけではない。実際、ロシアが躍起になり攻撃を拡大するにつれ、その種の作戦が行使される可能性はきわめて高い、と業界専門家らはみている。キエフにあるテレビ塔が破壊されたのは3月2日で、欧州最大規模のザポロジエ原発が攻撃されたのは3月3日で、いずれも攻撃開始から1週間後だ。
ロシアは2015年、ウクライナの主要社会基盤にサイバー攻撃をしかけ、6時間にわたる停電を引き起こした前歴がある。「(ロシアは今後)通信接続を妨げようとしてくるだろう」とボルンヤコフ氏は警戒している。
同氏いわく、緊急対応計画を複数レベルで講じている。イーロン・マスク氏のスペイスエックスから衛星通信システム「スターリンク(Starlink)」の中継局の追加提供を受けることもその一環だ。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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