CNBCによると、アマゾンは、販売する商品数も膨大ながら返品も膨大な数にのぼるため、返品商品をいかに再商品化または活用するかについてさまざまの工夫と対応に注力している。
▽2021年の返品率、18%から21%に上昇
全米小売連盟(National Retail Federation=NRF)が行った調査では、2021年に返品された商品群の総額は過去最高の7610億ドルに達した。米国の2021年の国防予算が7410億ドルであることを考えると、それがいかに大きな金額かがわかる。
また、NRFは、2021年の年末商戦期間中に販売された商品の16.6%が返品されたと見積もっており、前年比約56%増となった。オンライン販売だけをみると、2021年の返品率は21%で、2020年の18%から上昇した。
アマゾン(Amazon)は、返品に関する数値を公表していない。しかし、同社の2021年販売高が4690億ドルだったことから、返品金額も巨額であることがうかがえる
▽「返品されたすべての商品に何らかの用途を見つける」
また、返品に関係したサービスを提供しているオプトロ(Optoro)によると、米国で発生する返品によって年間1600万トンの二酸化炭素が排出されている。埋め立て地に送られる返品商品群の重さは58億ポンドと見積もられている。
アマゾンは、埋め立て地に送る商品を出していないが、最後の手段として、焼却によって「エネルギー回収」すると説明している。再包装して再販される商品も多いが、売り物にならない商品も多く、廃棄される返品商品はそれほどめずらしくない。
「返品されたすべての商品に何らかの用途を見つけることを奨励している」と、アマゾンの北米事業の返品業務責任者チェリス・アーマー氏は言う。
▽返品体験の向上は顧客維持のために必須
1300人のオンライン消費者を対象に2018年に実施されたナルヴァー・コンスーマー・リポート(Narvar Consumer Report)調査では、返品体験が簡単で便利であれば、その小売サイトを再度利用しようと思うと答えた割り合いが96%に達した。また、69%は、返品送料を自己負担しなければならないサイトでは買わないだろう、と答えた。
アマゾンは、返品方針を2019年に変更し、無料の簡単な返品手続きを数百万点という商品に拡大した。いまではウォルマートやターゲットといった大手小売店も、購入者が簡単に返品できるようにするための制度を導入している。
返品処理コストがかさむことは明白ながら、返品を受け入れなければ消費者がそもそも集まらないため、小売側は寛大な返品受け付け方針を掲げるしかない。
▽返品商品の寄付制度
アマゾンは現在、国内1万8000ヵ所の提携店舗で返品を受け付けている。アマゾン・プライム会員には、衣類を購入する前に試着できる制度もある。
それらの変更を受けて、返品への対応も大きな業務となりつつある。アマゾンは2021年に、物流コストに1520億ドルを費やした。2020年の1190億ドルからの上昇で、そのコストに返品対応費用も含まれている。
その一つが、アマゾンが2019年に導入した寄付制度だ。商品の販売業者があらかじめ設定しておくと、返品された商品は自動的に慈善団体への寄付に回される。同社は、非営利団体のグッド360(Good360)と提携している。同団体はウォルマートやCVS、ナイキを含む約400社とも提携している。非営利団体への寄付には税金控除の利点もある。
▽使用済み返品商品の再流通制度
さらに、中古品販売市場も成長している。アマゾンの子会社で返品業務を担当し、現在はコロラド州立大学の准教授を務めるザック・ロジャーズ氏は、中古品市場が2020年の6490億ドルから2021年は6880億ドルに成長したと見積もっている。
中古品販売は大きな潜在性を持つようになっている。アマゾンは、2020年に二つの新たな再流通制度を立ち上げた。その一つは、販売業者が返品された商品を第三者生産業者に送って競売にかけられる選択肢の提示だ。
もう一つの新制度は、一部の業者を対象に、返品された商品に等級をつけて再販できる制度だ。商品の等級はアマゾンがつけ、「新品同様」「非常に良好」「良好」「許容可能」に区分される。
▽「年間3億個以上の商品に第二の人生を」
アマゾンはさらに、返品商品を専門に販売する小売店の販路を開設しているほか、使用済み商品を返品した購入者にギフト・カードを提供している。
「それらの制度を通じて、年間3億個以上の商品に第二の人生を見つけられると考えている」と、アーマー氏は述べた。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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