ガソリン高騰に伴い、燃料費、ギフトカード、在宅勤務の継続といった福利厚生を提供して従業員の引き止めを図る企業が増えている。
■昇給や一時金支給
ウォールストリート・ジャーナルによると、ガソリン価格の全米平均が5ドルを超え、最高値を更新した6月中旬、国内主要都市のオフィス稼働率も44%と新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来の最高水準に達した(オフィスセキュリティー会社キャッスル・システムズ調べ)。
労働者の離職が続き、欠員の補充が困難な中、社員はガソリン高や企業のオフィス復帰プランに不満を抱いており、雇用主は事業を継続する上で従業員への特典提供は非常に重要と考えている。
ニュージャージー州の電子機器設計・製造会社トーマス・インストゥルメンテーションでは最近、オフィスで交わされる会話の多くが物価高に関係するようになっており、カサンドラ・グルーヤスCEOは全社員を対象に一律6%の昇給を実施した。ガソリン代を賄うため一時的なボーナス支給も考えたが、家計を考慮すると恒久的な昇給の方が良いと判断した。
100人の従業員を抱えるフロリダ州の小売店ドリフトウッド・ガーデン・センターでは、年初からガソリン代対策としてフルタイム社員の給料に50ドル、パート社員に30ドルを上乗せしたが、4月には20~30%の昇給を実施。クレイグ・ヘイズレットCEOは「そうしなければ多くの優秀な従業員を失うことになる」と話す。
また、テキサス州ダラスの保険会社ナショナル・ライフ・グループは最近、従業員に300ドルの給油ギフトカードを支給すると発表した。鉱業や石油・ガス業界向け点検サービスのピッツバーグ・ミネラル・エンバイロメンタル・テクノロジー(ペンシルベニア州)は3月から、全社員に毎月50ドルの燃料用デビットカードを支給しており、ガソリン高が続けば100ドルに引き上げる意向。同社は社員の医療費も100%負担するようにした。
■オフィス復帰を先送り
通勤代を抑えるため、オフィス復帰計画を延期または撤回し、可能な限り遠隔勤務を奨励している企業もある。従業員60人規模の化粧品・医薬品会社コスメティック・スペシャルティ・ラブズ(オクラホマ州)では、25マイル以上離れた場所に住む一部社員に対し、自宅勤務を週に1日増やすよう指示。営業やマーケティングなどの部署では、週3日自宅で仕事をし、2日オフィスに出勤する社員が増える可能性がある。ジェニファー・エリスCEOは「これはガソリン代を考えた措置」と話し、ガソリンスタンドチェーン「ラブズ」のギフトカード配布も検討している。
一方で、多くの経営者は景気後退の恐れも心配している。カリフォルニアの建築用石材販売クオリティ・マーブル&グラニットでは、全従業員対象のガソリン代補助を検討したこともあるが、今は不況になった場合の解雇を避けることと、自社の製品コストが50%近く上昇する中で健康保険と確定拠出年金(401K)の提供を継続することに重点を置いている。イーバン・コーエン社長は「給料やボーナスをどんどん出したいが、より大切なのは雇用を維持すること」と話している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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