ガソリン価格の高騰でEVの購入を検討する人が増えているが、EVの価格も大幅に上昇している。
■5月は前年比22%増
ウォールストリート・ジャーナルによると、EVの値上げは電池の材料価格の高騰が主因だが、EVに対する消費者の関心が非常に高まっていることも一因で、ここ数カ月でテスラ、フォード、GM、リビアン・オートモーティブ、ルシッド・グループが一部モデルの価格を引き上げている。
GMは電動ピックアップ・トラック「GMCハマー」の価格を6250ドル引き上げた。価格は約8万5000~10万5000ドルになったが、広報担当者によると同トラックの人気は高く、現時点で約2年のキャンセル待ち状態だ。
テスラも2022年、売れ筋の電動SUV「モデルY」の「パフォーマンス」バージョンを3回、合わせて約9%値上げし、現在の価格は6万9900ドルとなっている。
JDパワーによると、5月の米EV平均価格は前年同月比22%増の約5万4000ドル。内燃エンジン(ICE)車の平均価格は14%増の約4万4400ドルだった。
コンサルティング会社アリックスパートナーズによると、電池の主要な材料であるリチウム、ニッケル、コバルトの価格は、新型コロナウイルスの大流行前に比べ約2倍に高騰しており、EVメーカー各社は「(値上げは)最近の電池原材料の価格高騰を相殺するため」と説明している。
■客は払う気満々?
自動車大手は、大気汚染防止の規制強化、株主の気候変動対策への関心、EVの成長可能性に対するウォール街の思惑などを背景に、多額を投じてEV展開を急いでいるが、原材料価格の高騰はこの動きを複雑にする。EVは電池パックのコストが高く、車両の総コストの3分の1を占めている。
クレディ・スイスのアナリストは「自動車会社は収益を確保するため素材メーカーと緊密に協力する必要がある。例えばリチウムやコバルトを採掘する企業と直接連携して供給を確保し、コストを制御する必要がある」と指摘する。テスラやGMなどはこうした直接供給契約を結んでいる。
いずれ原材料価格が落ち着けば、初期購入者以外の需要を確保するため自動車メーカーにも価格を下げる必要が生じる可能性があるが、今のところ、メーカー幹部は「値上げによって消費者のEVへの意欲が損なわれることは心配していない」と話している。
市場に出ているモデルの需要は、多くの企業が数年前に価格プランを設定した時の予想より強く、数万台もの予約や数年にわたるキャンセル待ちを抱えるモデルもある。3月に一部のモデルを約20%値上げしたリビアンのRJ・スカリンジCEOは6月の投資家会議で「支払い意欲に関してはほぼ無限と思えるような世界にいる」と述べた。テスラのイーロン・マスクCEOによると、同社はコストの上昇を予測して先手を打とうとしており「現在の価格は今から6~12カ月後に納入される車のもの」で、「将来は値下げもあり得る」という。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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