新型コロナウイルス禍が経済、社会に大きな変化をもたらしたこの2年間で、何百万人もの米国人が転職や在宅勤務を経験した。その結果、職場で友人関係を築くことが難しくなり、職場の友人がそれほど重要ではなくなったと感じる労働者が増えている。
■静かに辞める
ウォールストリート・ジャーナルによると、多くの社員が依然として遠隔勤務を続け、企業がオフィス文化を再構築しようとする中で、職場での友人関係の意味が問われている。この2年間で、仕事と生活のバランスを取るため職場を「静かに辞める」人が増えた。その行動には、普段から同僚との付き合いやつながりを減らすことも含まれる。
ギャラップが6月に行った調査では、自宅とオフィスの両方で働くハイブリッド労働者約4000人のうち、職場に「親友」がいると答えた人の割合は17%で、2019年調査の22%から低下した。在宅勤務のみ、現場での勤務のみという人を含めた全労働者でも、職場に親友がいると答えた割合は20%から19%へと低下した。
一方、親友がいることと職場への愛着との関係は過去3年間で強くなっており、職場に親友がいない労働者は退職を望む傾向が強いという。20年以上にわたり労働者の仕事上の友人関係を調査してきたギャラップによると、22年調査では、職場に親友がいない人のうち「仕事に非常に満足している」と答えた人は約15%で、19年の23%より少ない。
■心の負担
カリフォルニア州クパティーノのデータベース管理者、マイケル・トロッター氏(53)は、2020年に前の仕事を辞める数カ月前、一日の終わりに同僚からかけられる言葉を恐れるようになっていた。「一杯飲みに行かないか?」
当時のトロッター氏は「8時間、9時間、10時間働いてからビールを飲みに行き、さらに4時間も仕事の話をしたくない」という心境だった。以前はたまに加わっていた仕事帰りの付き合いを苦痛と感じ、もっと家族との時間を多くしたいと思っていた。
今の職場ではほとんどが遠隔勤務で、職場の友人関係を築くことには興味がない。この2年間に実際に会った同僚は2人、しかも数分で分かれたという。「仕事が終わったら用事も終わりですから」
ニューヨーク大学スターンビジネススクールの教授で、仕事上の人間関係を研究しているジュリアナ・ピルマー氏は、ズームやその他のオンライン会議に依存することが増えた結果、仕事上の友人関係を築き、維持することに多くの人が負担を感じていると指摘する。
■自分への評価も気にならず
ミネアポリス地域の機械エンジニアで、外向的と自称するチャド・エスリンガー氏(45)は、職場の友人とカラオケやその他の付き合いで出歩くことが多かった社会人になりたての頃を懐かしく思っている。現在の職場では、同僚らが職場の付き合いをあまり重視していないように見えるからだ。氏は「職場に本当の友達が欲しい」と言い、「生産的で、ロボットであることが目的ではない」職場の集まりが懐かしいという。
ソフトウェア検索サイトのキャプテラ(Capterra)が、米労働者約1000人を対象に実施した調査では、仕事の満足度を考える上で最も重要でない要素として「同僚との関係」と「自分に対する評価」が同列に挙がった。14の選択肢のうち、最も重要なのは「報酬」と「仕事と生活のバランス」だった。また、離職率の高い会社にいた人の60%以上が「同僚と交流したり知り合ったりすることに価値がなくなってきた」と答えた。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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