電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHV)を所有する米国人の増加に伴い、充電ステーションの運営会社間で広告の争奪戦が始まっている。
■店に入る直前に宣伝
ウォールストリート・ジャーナルによると、全米最大の充電網を持つチャージポイント(ChargePoint)は、デジタルディスプレイ企業のAra Labs、GSTVとしてガソリンスタンドなどの小売店向けにビデオ広告を制作しているデスティネーション・メディア(Destination Media)と提携して、全米規模の広告ネットワークを構築している。
エネルギー省のデータでは、国内には現在5万63カ所の充電ステーションがあり、そのうち2万8753カ所をチャージポイントが運営する。
チャージポイントの広告ディスプレイは2022年内に始まり、その後1年で主要10都市にスクリーン約1000台を設置する予定。ディスプレイでは、ニュース、天気予報、流行文化などの内容を含む3~5分のオリジナルビデオに広告を組み込む。
チャージポイントの充電器を購入・設置する企業にとって広告はオプションとなるが、充電ステーションは大手小売店に置かれている例が多く、ステーションの設置業者は「店に入る直前の高所得層をターゲットにできる」と各店のマーケティング担当者に売り込んでいる。
ディスプレイ付き充電ステーション経営で競合するボルタ(Volta)のブラント・ヘイスティングス最高商業責任者(CCO)も「われわれは人々がすでに時間とリソースを使おうとしている場所にいる」と、広告収入に期待を寄せる。
ディスプレイ広告が流れる充電所はまだ少ないが、EV関連事業者は新しい収入源を探しており、連邦政府や州政府はインフラ投資・雇用法とインフレ抑制法(IRA)に基づいて再生可能エネルギー供給業者に数十億ドルの補助金を交付するため、ディスプレイ付きの充電所は今後数年で増える可能性が高い。技術系コンサルティング会社アトラス・パブリック・ポリシーのニック・ニグロ氏は「米国では今後5~7年で充電サービスを収益化するためのさまざまなビジネスモデルが登場するだろう。電気の販売だけでは収支が合わない事業に、広告で収入を追加できる可能性がある」と話す。
■チャージポイント対ボルタ
チャージポイントと直接競合するのは、特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて上場した後、21年後半にメディアネットワークを立ち上げたボルタになる。同社は常に広告販売を中心とした事業モデルを展開しており、現在、国内28の州および準州に5400台のスクリーンと2920台の個別充電器を持っている。ヘイスティングスCCOによると、車、パッケージ商品、エンタテインメント・ブランドはスクリーン広告と相性が良く、最近はコカ・コーラ、ネットフリックス、フェデックスなどがキャンペーンを展開した。ミシュランの場合、年初の広告キャンペーンで消費者のEV専用タイヤに対する認知度が70%上昇したという。
チャージポイントとボルタの広告事業にはいくつかの違いがある。GSTVは消費者データを直接収集しないが、ボルタは携帯電話アプリからデータを収集し、それを小売業者の顧客データベースと組み合わせる。また、ボルタの充電ステーションのセンサーは、消費者が乗っている車種によって広告対象の絞り込みができる。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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