車の照明と言えば、少し前までは前照灯、尾灯、方向指示器にいくつかの室内灯くらいだったが、最近は点滅して手の込んだ表示をするフロントグリルの「ライティング・シグネチャー」や、変更可能な車内のムード照明、リアの横幅全体を使ったライトバーなど用途が増え、市場が急拡大している。
■27年まで年5%で成長か
オートモーティブ・ニュースによると、新しい快適性、安全性、デザイン性の導入に伴い、自動車照明の市場は生産を上回る伸びが予想され、仏コンサルティング会社ヨール・グループ(Yole Group)は、市場は315億ドルから422億ドルへと年5%のペースで伸びると見ているが、2021~27年の生産の年間成長率は2%にとどまる見通し。
現在、エクステリア照明にはセンターリアブレーキランプ、車に近づくドライバーを迎えるように点灯するロゴやグリル照明、ミラーに付いた小型方向指示器、欧州などで義務付けられている昼間走行灯や自動ハイビームなどが含まれる。インテリアは、単純な天井やグローブボックスのライトから、車内を優しく照らすエリアライト、ドアパネルに埋め込まれたライト、さらに天井を星空のように見せるスターライト・ヘッドライナーまで、照明の用途は大きく広がっている。
LEDの前照灯も、高級車から徐々に大衆車種に移行して、成長ペースの維持に貢献している。売り上げ構成では、前照灯が市場全体の約3分の2を占め、尾灯(20%)、インテリア(15%)と続く。
■活発なM&A
ヨールによると、現在の自動車照明市場は、21年にシェア21%を獲得した小糸製作所をはじめ、マレリ、ヴァレオ、ヘラー(現フォルビア)、スタンレーの大手5社が支配している。技術的なリーダーは高級車向けを主力とするヘラーとマレリで、最新のイノベーションが見られるのはこの車両セグメントだ。小糸、ヴァレオ、スタンレーはコストと性能の最適な組み合わせを求める一般的な自動車メーカーを相手にしている。
近年は業界の合併・買収(M&A)が活発で、18年にはカルソニックカンセイがFCAからマニエッティ・マレリを、その1年後にはAMSがオスラムを買収した。21年には、フォルシアがヘラーを買収してフォルビアとなった。またプラスティック・オムニアムはオスラム・オートモーティブ・ライティング・システムズを買収した後、22年4月には照明市場の約3%を占めるインドのバロックの主要部門を買収している。
ヴァレオのクリストフ・ペリラCEOは「電動化が車の設計に新しい可能性をもたらしている。一つは、グリルがなくなったため車の前部に多くのライトが配置されるようになり、デザイナーはライトシグネチャーを作れるようになった」と述べ、今後は照明による安定した収入が、運転支援やその他のハイテク分野でヴァレオを支えるようになると期待している。
照明市場はこの先、関連分野である自動運転用ライダー(光検知・測距装置)と融合していく可能性があり、多くのライダー企業が照明のティア1サプライヤーと提携または合併して、自動車市場への参入を支援している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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