電気自動車(EV)への移行を支えるEV用電池の需要急騰を受けて、米国でコバルト生産が再開されることになった。最後に国内でコバルトが生産されたのは30年近く前だという。
ブルームバーグ通信によると、オーストラリアのコバルト・ニッケル生産大手ジョボア・グローバル(Jervois Global)は、アイダホ州でコバルト鉱山を開業する。年間2000トンのコバルト鉱石を採掘する予定で、それを国外で精錬した後、米国内に持ち込んで顧客に提供する計画。
同社はブラジルにニッケルとコバルトの製錬所を所有し、カナダやオーストラリアなどでも精錬作業の外部委託を交渉している。
世界のコバルト製錬所の約80%は中国に集中しているが、ジョボアがフィンランドに所有する巨大なコッコラ精錬所など、ほかの場所でも生産能力は拡大している。
ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンス(BNEF)によると、大手自動車メーカーが三元系からリン酸鉄系リチウムイオン電池に移行していることを受けて、コバルトの需要は2022年の12万7500トンから30年には15万6000トンに上昇すると予想される。
ジョボアのブライス・クロッカーCEOは、コバルトは国家安全保障上最も重要な課題と指摘しながら「新しい供給源、特に安定した管轄区域での供給源はそれほど多くないため、この米国内の鉱山は非常に重要」だと話す。米地質調査所によると、米国では少なくとも1994年以来、コバルトは生産されていない。
コバルトは、米国が気候変動対策の重要な柱と位置づけるEVの電池生産に不可欠で、政府の重要鉱物リストにも含まれている。カリフォルニアとニューヨークでは、今後数十年以内にガソリン車の新車販売を禁止する法律が可決され、自動車メーカーは野心的な電動化目標の達成に向けて準備を進めており、電池に必要な材料は不足し、世界的にその確保が急がれている。
コバルト鉱の3分の2以上はコンゴ民主共和国(CDR)で生産されているが、汚職、人権侵害、児童労働といった問題があるためその他の国から調達するメーカーが増えつつある。また、米インフレ抑制法(IRA)の成立によって、米国内で調達された電池材料は優遇措置の対象になる。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
米国の勤め人たち、毎日出社に戻る気なし 〜 雇用側も容認、遠隔労働はしばらく続く見通し
-
膵臓がんの早期発見、人工知能の活用で劇的に前進 〜 メイヨー・クリニックの教授ら、精度92%の人工知能モデル群を構築
-
2025年4月14日 アメリカ発ニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
EV充電施設を狙ったサイバー攻撃が増加
-
アップル、ヘルス・アプリケーションを刷新へ 〜 人工知能医師機能を大幅に拡充
-
2025年4月10日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
生成人工知能をもっとも使っている職種や業界がデータで明らかに 〜 アンスローピックの利用者調査結果が実態を明示
-
2025年4月9日 アメリカ発ニュース, 世界のニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
車の新モデル発売延期相次ぐ~サプライヤーは苦境に
-
ダラスおよびフォート=ワースがデータ・センター拠点として浮上 〜 安価な電力や低い税率が追い風に
-
2025年4月1日 アメリカ発ニュース, 世界のニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
BYDの急速充電システム、5分で400キロの走行距離延長
-
2025年3月31日 アメリカ発ニュース, 世界のニュース, 米国ビジネス, 自動車関連
部品業者は「危険な環境」に直面~25年、EVの不確実性と関税で
-
2025年3月28日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
ハッカーら、サービスナウのセキュリティー脆弱性を悪用 〜 パッチ未実装の会社らを世界中で標的に