合成皮革メーカーの持ち株会社ウルトラファブリックス・ホールディングス(Ultrafabrics Holdings、東京都八王子市)は、サステイナビリティを重視する消費者志向や、コスト削減を図る自動車メーカー、航空会社などの動きを受けて業績を堅調に伸ばしており、今後も大幅な市場拡大を見込んでいる。
■コロナ後、株価5倍に
オートモーティブ・ニュースによると、同社は現在、電気自動車(EV)大手テスラ、航空大手ユナイテッド、家具メーカーなどに座席用の素材を供給しており、この事業は環境に貢献するだけでなく経済的利点も大きいと見ている。
吉村昇(よしむら・のぼる)社長(60)が目指すのは「合皮といえばウルトラファブリックス」と言われるようになること。同社は意図的にプレミアム商品を開発しており、その戦略は時代に合っているという。
車の購入者は長年、牛革やシープスキンを高級品の選択肢と考えていたが、環境保護意識の高い最近の消費者は動物を殺さずに作られた製品を求めている。また、航空会社は燃料節約と二酸化炭素(CO2)排出量削減を目的に軽くて本革に似た素材を使うようになっている。インドの調査会社ストレイツ・リサーチによれば、世界の合成皮革市場は2030年までに672億ドル規模に達すると予想される。
ウルトラファブリックスは、新型コロナウイルス禍で世界の自動車産業が大混乱に陥った20年は厳しい1年だったが、その後は売り上げと利益が回復し、株価は5倍に高騰。23年3月期は売上高1億2600万ドル、営業利益1870万ドルを見込んでいる。アナリスト予想は、平均でそれぞれ1億2900万ドル、2000万ドルと評価が高い。
■成長の原動力はEV
ウルトラファブリックスは、合成皮革製造・販売の第一化成が17年に米国のウルトラファブリックスと合併し、社名を変更してできた。第一化成は、本革のような柔らかさを持ちつつ、強度と弾力性、軽量性を兼ね備えた素材を開発した。裏布、フォーム、クッション層、最終保護フィルムという4つの層を組み合わせ、革のような質感が特徴だ。現在は第一化成の元来の事業が製造の主体となり、ウルトラファブリックスだった部分がマーケティングと販売を統括している。
EV市場は、環境意識の高いユーザーが多く、車に動物性原料を使うことに抵抗感を持っているため、同社の成長の原動力となる。テスラは、車を「完全ビーガン(純粋菜食)」にしてほしいという消費者の声に応えて16年から合皮を使用しており、他社も追随して、英ジャガー・ランドローバーは新型「レンジローバーSV」などでシートの選択肢に合皮を取り入れている。
いちよし経済研究所のアナリストは「テスラなどのEVメーカーは合皮の使用を増やしており、ウルトラファブリックスもEVメーカーへの出荷を増やしている」と話した。
ウルトラファブリックスの今後の課題は、社会問題や環境問題への意識が高い消費者に支持される製品を作り、収益性の高い事業を構築することだが、そのための障壁が最も高いのは中国と日本で、合皮製品の市場があまり拡大していない。欧米の消費者は代替素材を受け入れているが、日本と中国だけは高級な選択肢として本革を提供すべきだと考えているという(吉村社長)。吉村氏は「まだサステイナビリティーはプレミアムなオプションという感覚がある。しかし、おそらく遠くない将来はマストアイテムになるだろう」と話している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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