人工知能と労働者の共存は「拡張労働力」がカギ ~ 専門家のグレン・ガウ氏、棲み分け基準三つを提示

人工知能が人間の仕事を奪うという懸念が表面化した当初には、人間にはできない仕事や人がやりたがらない仕事を機械にまかせるという考え方が雇用側や自動化推進派たちの反論の主流を占めた。そういった議論は昨今、やや落ち着いた感があると同時に、より体系化された認識が浸透しつつある。

▽「すべきでない」「やりたがらない」「できない」仕事を人工知能に

人工知能関連の会社で取締役やコンサルタントを務めるグレン・ガウ氏は最近、フォーブス誌に寄稿した記事のなかで、「拡張労働力(Augmented Workforce)」という概念のもと、それをより整理したある種の基準を提示した。

同氏は、人工知能が遂行する業務を、「人間がすべきでない仕事」「人間がやりたがらない仕事」「人間にはできない仕事」の三つに分類することで、労働者と人工知能の共存のあり方を示した。

1.人間がすべきでない仕事

けがや疾病の危険がともなう仕事を人間に代わって人工知能搭載ロボットが遂行する分野がそれにあたる。たとえば、溶接や運搬、あるいは有毒の塗料や接着剤をあつかう業務を機械にまかせるということだ。

また、人工知能は、人間が行う作業の安全性向上にも役立つ。機械視認(コンピューター・ヴィジョン)技術によって倉庫や工場の内部を監視し、物品が安定性を欠いた状態で積み重ねられていたり、作業員がすべきでない仕事をしていたり状態を検出できる。

そのほか、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を人工知能と組み合わせることで、作業員らの研修の効果を高め、結果として安全性を高めることも可能だ。

2.人間がやりたがらない仕事

その典型は単純な反復作業だ。賃金水準が低いため就職希望者が極端に少なく、最近では雇用主が欠員に対して十分な作業員を確保できないという現実もある。製造や飲食サービス、農業、小売といった業界は、かつてない労働力不足に見舞われており、その状態が今後数十年にわたって続くと予想される。

たとえば、人工知能を搭載したチャットボットは、その種の労働力不足に対応するツールの代表例だ。顧客担当職がチャットボットに雇用機会を奪われる、と問題視されて久しいが、基本的または単純な内容にはチャットボットが対応し、チャットボットでは解決できない高度または複雑な内容の問い合わせだけを顧客対応担当者らにまわすという仕事の流れがすでに確立されつつある。

また、小売店やレストランを対象としたスケジュール管理のソフトウェアも、人材資源を必要な時間帯にもっとも効率的に配置するのに役立つ。

3.人間にはできない仕事

人工知能がもっとも大きな価値をもたらす分野がそれにあたる。大量のデータを取り込んで分析するのは、人工知能が得意とする仕事だ。人間が束になって膨大な時間をかけなければならないデータ収集および整理、分類、分析を人工知能ならすぐに処理できる。

たとえば、たくさんの履歴書をスキャンして、雇用側が求める特性を持つ候補者たちを書類審査するといった例が挙げられる。また、供給網管理ソフトウェアと人工知能を統合し、過去の販売実績や経済指標、天候といったさまざまのデータを加味して何をいつ注文すべきかを決めるための洞察をもたらすものもある。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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