デジタル・ツイン技術が、職場や日常生活に革新をもたらしている。フォーブス誌によると、デジタル・ツインの応用は急速に拡大しており、仕事や暮らしへの活用がこれからさらに加速すると予想される。同誌では、デジタル・ツイン技術が実際にいかに活用されているかや、今後どのように活用されるかについて、同誌独自の「テクノロジー・カウンシル」のメンバー15人に聞いた。

１．供給網の自動化と計画

テキサス州内のスーパーマーケットにシリアルを供給している会社が、自社の供給網のデジタル・ツインを構築中だ。完成すれば、その会社は、オースティンで発生した洪水が州内の配送網にどのように影響するかや、配送経路をどのように最適化できるかを仮想世界で模擬化でき、正解を一目瞭然ですぐに特定できる。（ロヒット・シュリヴァスタヴァ氏、Anaplan）

２．複雑な職場環境の改善

手術室のように複雑な職場環境をデジタル・ツインにすることで、その環境を改善するために何をすべきかについてデータを入手できる。それらのデータを人工知能技術を使って分析することで、一部分だけでなく全体として長期的に職場環境を改善する方策を判断できる。（ジェニファー・エスポジート氏、Magic Leap）

３．身体の異変を早期検出

心拍数や血圧、酸素水準を測定できるスマート腕時計またはそのほかの身体装着端末からデータを取得し、装着者の既往歴や年齢といった要素と組み合わせてデジタル・ツインを構築する。それによって、健康に関する要注意の急な異変を早期に検出できるようになる。（ウイリアム・ベイン、ScaleOut Software）

４．健康変化を予想

利用者が健康上の履歴といった一連の質問に回答すると、人工知能で自動的にデジタル・ツインが作成され、将来の状況を予想して医学的助言を提供するといったことが可能になる。（ヴァシリー・ヴォロパエフ、Smartbrain）

５．最適の治療計画を作成し経過を追跡

MRIやCTスキャン、超音波といった医療機器の画像データとそのほかの検査結果をもとに、患者のデジタル・ツインを構築する。それを使って最適の治療計画を作成し、結果や進捗状況を容易に追跡することができるようになる。（サム・グラッセンバーグ、Level Ex）

６．運転行動データを追跡

自動車保険会社が安全運転に対して保険料の割り引きを適用している。その種の特典供与の根拠として、保険加入者の運転データにもとづくデジタル・ツインを使うことができる。運転者らは、自分の運転データが追跡されていることを意識する結果、さらに安全運転をするようになる。（アンドリュー・シーマー、Inventive）

７．自動運転車の機械学習

車の自動運転機能は、実際に走行する車両から収集したデータを使って人工知能に学習させているが、考え得るすべての状況のデータを集めるのは困難なこともある。それをデジタル・ツインで模擬的に再現することで、仮想模擬化環境において自動運転技術の学習作業を行えるようになる。（ジェイムス・カプラン、MeetKai）

８．設備機器の監視と修正

生産工場設備用の検知器には、針で温度を表示するようなアナログ式のものも多数存在する。それらをビデオカメラで読み取ってデジタル情報に変換し、それらのデータにもとづいて工場のデジタル・ツインを構築すれば、設備機器の保守管理を大幅にスマート化できる。（ブルース・コーンフェルド、StorMagic）

９．機器操作担当者らの研修

デジタル・ツインは、メタヴァースでスマートめがねを使う用途にとって欠かせない。現実世界を完全に立体的に再現したデジタル・ツインは、機器を操縦する技師が現実さながらの研修を受けられるようにする。（ニック・チェルクリ氏、ThirdEye Gen）

10．アクセスしにくい場所の点検

デジタル・ツインは、アクセスしにくい産業施設の点検や検査に有用だ。たとえば、パイプライン会社は、地下設備のデジタル・ツインを構築して仮想検査を行っている。資産管理を効率化すると同時に労働者の安全性も向上させられる。（マイケル・アンダーソン氏、Expeto）

11．ウェブサイト交通量の予想

スーパーボウルに広告を出してウェブサイトに訪問者（閲覧者）を呼び込もうとする前に、サーバーやシステムが大量のインターネット交通量に対応できるかどうかを、デジタル・ツインを使って仮想試験することができる。（フィル・ティー氏、Moogsoft）

12．仮説の模擬化

デジタル・ツインは、さまざまの意思決定を試験して、どれがもっとも望ましい結果を出すかを予想できるようにする。タタ・コンサルタンシー・サービシズ（TataConsultancy Services）は、パンデミック後の事務所再開に際して、デジタル・ツインを使った分析にもとづいて種々の戦略を選択した。（アブヒジット・マズムデール氏、Tata Consultancy Services）

13．複雑な情報の伝達

デジタル・ツインの真の価値は、専門知識のない人たちに複雑な内容を伝達できるようになる点にある。工場を立体的に仮想再現したデジタル・ツインを使えば、現場の管理者が経営陣に問題点を説明するといった場合に有効だ。（アレキサンダー・ヒル氏、Senseye）

14．利用者向けサービスの管理と向上

ウーバー（Uber）のような会社が自社事業のデジタル・ツインを構築して、運転手と利用者の動きを模擬化し、利用者向けサービスの管理と向上に役立てることができる。（カイトキ・アガーワル氏、A5G Networks）

15．テーマパークの設備点検

テーマパークの運営会社がデジタル・ツインを構築して、アトラクションの安全性問題の予想に活用している。保守および点検によるサービス中断の回避や来場者らの体験向上に役立つ。（ラドヒカ・クリシュナン氏、日立ヴァンタラ）

（Gaean International Strategies, llc社提供）