2022年には機械学習技術の活用があらゆる面で拡散した。2023年にはその傾向がさらに加速すると予想される。ベンチャービート誌によると、アマゾン・ウェブ・サービシズ(Amazon Web Services=AWS)の人工知能&機械学習責任者ブラーティン・サハ氏は先日、機械学習をめぐる特筆すべき動向の考察をもとに機械学習普及のカギとなる6大要因および傾向を挙げた。
1.モデル群の高度化
ここ数年間で機械学習モデル群が格段に洗練された。洗練度を測る一つの方法が、モデル群で使われる媒介変数(parameter)の数だ。サハ氏によると、2019年には約300万個の媒介変数が使われていれば非常に高度のモデルと見なすことができたが、2022年には媒介変数が5000億個を超えるモデルが最高水準と考えられるようになった。
「わずか3年で機械学習モデルの洗練度が1600倍になったことを意味する」とサハ氏は話している。
そういった巨大なモデル群は、最近では基盤モデル群(foundation models)と呼ばれている。同氏によると、基盤モデル群の手法をとることで、巨大なデータセットで一度学習させたのち、さまざまのタスクに応じて再使用できるようになる。そのため、会社らは機械学習を導入しやすくなる。
2.データ量の増加
機械学習に使われるデータの量と種類が急増している。テキストだけでなく、音声や動画といった非構造化データも使われるようになっている。AWSでもモデル群の学習を支援する複数のサービスが開発されている。
たとえば、非構造化データの処理を支援するツール「セイジメーカー・データ・ラングラー(SageMaker Data Wrangler)」は、それによって、より実践的な機械学習の構築を可能にする。AWSは、非構造化データによって訓練された機械学習技術を活用し、地理空間データの新しいサポートも追加している。
3.機械学習の産業化
機械学習は、人工知能技術を使った技術または手段、解決策だが、開発も応用も非常に広まったことから、一つの産業分野として成立するまで成長している、とAWSではみている。これは、機械学習のツールと基幹設備がより標準化していることを意味し、結果として会社らがアプリケーション群を比較的容易に構築できるようになっている。
サハ氏によると、機械学習の産業化は、開発を自動化し信頼性を高めることから重要だ。「アマゾン社内でも機械学習の開発にセイジメーカーを使っている」「たとえば、アレクサのもっとも複雑な発話モデルは、セイジメーカーで学習させている」と同氏は説明した。
4.具体的な目的に応じた機械学習用途(応用法)
機械学習が普及している背景には、特定の目的のために構築されたアプリケーション群の存在もある。機械学習の一般的な使用目的に合致した自動化が顧客から求められている。たとえば、AWSでは、発話のテキスト化やテキストの読み上げ、翻訳、異常検出といったサービスを提供している。
さらに、感情分析(通話最中に相手の感情を理解する機能)も、AWSがサポートするようになった複雑な用途の一つだ。この種の用途(アプリケーション)が提供されていることで、会社らは機械学習を活用したサービスを比較的容易に提供できる。
5.責任を果たす人工知能
サハ氏によると、「人工知能や機械学習の成長にともなって、責任をもってそれらの技術を使わなければならないという認識も広まっている」。
責任を果たす人工知能には、いくつかの特徴がある。まず、人種や宗教、性別、そのほかさまざまの属性情報にかかわらず、すべての利用者にとって公正なシステムでなければならない。また、説明可能であることも重要だ。さらに、人工知能の運用状況を確認する統治構造も必須だ。
6.人工知能の民主化
機械学習のツールや技能をより多くの人が使えるようになっている。「データ科学の専門知識を持った人材が足りないという声が顧客から寄せられている」とサハ氏は言う。その課題を解決するうえで重要なのが、用途に応じたロー=コード・ツールの開発、そして非技術人材資源の教育と研修だ。
サハ氏によると、「AWSは、機械学習開発者らの研修に投資している。2025年までに2900万人以上の能力開発を支援する計画だ」。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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