2022年は、テスラの成功に続こうとする新興電気自動車(EV)企業に出資する投資家にとって厳しい年となった。自動車業界は内燃エンジン車(ICE)からEVへの移行に1兆ドル以上を投じているが、今後はもっと主流の消費者層にEVを売り込んでいく必要がある。
■ラインナップを大幅拡大
ロイター通信によると、金利が上昇し金融市場が乱高下する中、米国内では多くの新興EV企業の株価が下落し、21年の上場直後は市場価値がフォードより高かったリビアン・オートモーティブ(Rivian Automotive、カリフォルニア州)はこの1年で70%以上も値を下げた。英アライバル(Arrival)は1年以内に資金が底を突くと警告し、ルシッド・グループ(Lucid Group、加州)は高級EV「エア」の製造に苦戦、米国で上場する中国の小鵬汽車(Xpeng、シャオペン)は株価が80%以上低下している。
しかし、多くの自動車メーカーや政府は、EVがよりクリーンで安全な輸送手段を提供すると信じており、欧州諸国やカリフォルニア州は35年でICEの新車販売を終了する方針だ。
テスラは21年、企業評価額が1兆ドルを超え、世界で最も時価総額の高い自動車メーカーに成長しており、かつてはEV開発に消極的だった既存の自動車メーカーも23年からは多くの新しいEVを市場に投入する。
現在、世界最大の自動車市場である中国ではEVが市場の約21%を占め、欧州では乗用車販売の約12%がEVとなる一方、米国では6%程度にとどまっている。普及の障害としては、公共急速充電インフラの不足、主要材料の不足からくるEV用電池のコスト上昇、米中欧などの主要市場でEV購入を後押ししてきた政府補助金に対する先行き不透明感などが挙げられる。
■車種増えても売れるのは一部?
生産予測会社オートフォーキャスト・ソリューションズ(AFS)は、EVは29年までに北米市場の3分の1を占め、世界で生産される車の約26%を占めると予想する。ただし、EVの販売台数が滑らかな上昇カーブで増え続けることはなく、多くの経済学者が予想するように23年に景気が後退すれば普及も遅れると見ている。
一方、ウォーズ・インテリジェンスは、27年の北米販売台数の80%弱をICEが占めると見ており、同社のアナリストは自動車メーカーの生産計画を基に「メーカーは次の10年に向けて力強いICEの生産量を見込んでいる 」と語る。
メルセデス・ベンツ、フォード、ゼネラル・モーターズ(GM)など伝統的な自動車メーカーは、テスラや新興EV企業に対抗するため、22年を通じて多くの新しいEVモデルを発表する計画で、23年と24年にはこれらのほとんどの量産を始める。
AFSのジョー・マケイブ社長は「北米では25年までに74種類のEVが提供される可能性があるが、そのうち年に5万台以上売れるのは20%以下」と見ており、メーカーは多くの限定的なモデルと過剰な生産能力に悩まされることになりかねない。経済の減速も、欧州や中国の自動車需要全体に脅威を与えている。20世紀初頭にも、ヘンリー・フォードら業界の先駆者が起こした自動車人気の波に乗ろうとする投資家の後押しを受けて新しい自動車会社が次々と生まれたが、1950年代になると世界の自動車産業は統合され、デューセンバーグのようなかつて隆盛を誇ったブランドは姿を消した。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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