早ければ2023年内にも、米国のレストランで培養肉が食べられるようになる可能性がある。
■動物殺さずに生産
ロイター通信によると、培養肉は、家畜から採取した少量の細胞に栄養を与え、バイオリアクター(生物反応装置)と呼ばれる鉄製の巨大容器で培養し、本物の肉のような見た目と味に加工されている。
現在この製品の小売り販売を認めている国はシンガポールだけだが、米食品医薬品局(FDA)は22年11月、アップサイド・フーズ(UPSIDE Foods、カリフォルニア州)が培養した鶏の胸肉に関して「人間が食べても安全」と発表した。同社は早ければ23年内にレストランへ、28年には食料品店に製品を届けたいと考えている。ただし、それには農務省食品安全検査局の検査を受け、ラベルに同局の検査済認証をもらう必要がある。
加州のアップサイドの施設では、白衣を着た従業員がタッチスクリーンを見ながら栄養素を混ぜた巨大な水の桶を監視しており、肉は「SlaughterlessHouse(殺さない処理場」と呼ばれる部屋で収穫・加工され、検査と実験が行われている。この鶏肉は、調理後は従来の鶏肉と同様の味になるが、生の状態だと色がやや薄く、より均一な褐色をしている。
■課題はサプライチェーン構築
アップサイドのほかにも、加州の培養肉会社グッド・ミート(GOOD Meat)がすでにFDAに許可を申請しており、オランダのモサ・ミート(Mosa Meat)とイスラエルのビリーバー・ミーツ(Believer Meats)も同局と協議中だという。
4社の幹部らによると、規制当局の承認は培養肉を消費者に幅広く供給するための最初の障害に過ぎず、企業が直面する最大の課題は、細胞に与える栄養素の配合や培養肉の大量生産に必要な巨大なバイオリアクターのための新しいサプライチェーン(供給網)を拡大することだという。
今のところ生産量は限られ、アップサイドの場合は年間40万ポンド程度。21年に米国で生産された従来の食肉・鶏肉の量は1060億ポンドに上る。
シンガポールのレストランに製品を販売しているグッド・ミートの共同設立者ジョシュ・テトリック氏は「生産規模の拡大に必要な資金を調達できなければ、各社の製品は従来の肉と競合できる価格帯に達しないかもしれない。当社や他社が大規模なインフラを構築するまでは、生産はかなり小規模になる」とみている。
非営利団体グッド・フード・インスティチュート(GFI、本部ワシントンDC)によると、培養肉部門はこれまで世界で20億ドル近くの投資を集めている。ただしテトリック氏によると、グッド・ミートが量産に必要な規模のバイオリアクターを建設する場合、数億ドルかかると言う。
■倫理面と環境面を強調
業界は、動物を殺さず、牧場が必要ないという倫理的・環境的な観点から消費者に製品を売り込む計画で、培養肉は植物由来の食肉と違って「本物の肉」だと主張できる利点もある。
それでも培養肉に嫌悪感を抱く人も多いと考えられ、テトリック氏は「ためらう消費者を引きつけるには、企業は製品がどのように作られ、食べても安全であることをできるだけ明確にする必要がある。透明性を保ちつつ、食欲をそそるようにしなければならない」と話している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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