完全な自動運転車(AV)の開発は予想以上に困難で、コストがかかることが分かってきたため、投資家は鉱業用トラック、トラクター、フォークリフトといったより市場が小さく単純な自動運転技術を開発する新興企業に資金を投じている。
■現実的な選択肢
ロイター通信によると、ロボタクシー(自動運転タクシー)に続いて自動運転貨物トラックの開発も各社が苦戦する中、最近のAV投資家は、交通量がほとんどない場所で低速走行する、より単純で、あまり資金を必要とせず、回収までの道のりが明確な自動運転の形態に注目している。関心を集めているのは、英国のオックスボティカ(Oxbotica)、スウェーデンのエインライド(Einride)、米国のアウトライダー(Outrider)、英国のオリゴー・インターナショナル(Aurrigo International)などだ。
自動運転フォークリフト製造のフォックス・ロボティクス(Fox Robotics、テキサス州)が2022年10月に行った2000万ドルの資金調達ラウンドを主導したBMWアイ・ベンチャーズ(BMW i Ventures)のキャスパー・セージ氏は「どんな環境でも動く完全な自動運転はまだ何年も先の話なので、機能する事業例を確立して問題を縮小する必要がある」と話す。
プライベート・エクイティ(PE)投資会社モビリティー・インパクト・パートナーズのアサド・フセイン氏は「自動運転の乗用車に進歩が見られず、その高い資本要件を考えると非舗装(オフロード)でよりかっちりした環境向け技術への投資シフトは非常に現実的だ」と指摘する。
■鉱業、農業、建設現場
オックスボティカはこの1月、鉱山や遠隔地で使うAVなどより多くの製品を展開するために1億4000万ドルの資金を調達したと発表。同社の初期からの機関投資家キコ・ベンチャーズを共同で創設したジェイミー・ボルブラクト氏は「鉱山会社は、ドライバーがトラックに乗ってくれないと離れた場所で1時間当たり数百万ドルの損失を出す可能性がある。そういう環境こそAVがふさわしく、業界は魅力的な市場の一つだ」と語る。
アウトライダーも1月、現在顧客の貨物集積所で低速運行している自動運転トラックの規模拡大のため、7300万ドルを調達した。
交通量の少ないオフロードで使われる建設機械や農機も新興AV企業の成長分野の一つで、AVの新興企業はキャタピラー、ディア、CNHインダストリアルといった伝統的な重機メーカーと同じ場所で事業展開している。
エイペックスAI(Apex.AI、カリフォルニア州)は、オックスボティカと同様、乗用車やトラック運送以外の顧客に向けてさまざまな用途の車で使うAVソフトウェアを設計しており、農機具大手アグコ(AGCO)は実験的な自動電動プランター(種まき機)にエイペックスのソフトウェアを使っている。
ディアは、21年に2億5000万ドルで自動運転トラクターのベア・フラッグ・ロボティクス(Bear Flag Robotics、カリフォルニア州)を買収するなど、すでに農業自動化に向けたAV関連事業を多数買収している。
身売り前のベア・フラッグに投資していたトラックス・ベンチャー・キャピタルは、別の新興農業関連AV会社を積極的に探している。同社は22年6月、1200万ドルの資金調達を発表した建設用重機・鉱山機械用の後付け半自動運転システム開発企業テレオ(Teleo、カリフォルニア州)にも投資している。テレオのシステムは、低速走行する複数のAVを人間のオペレーターが遠隔操作する仕組みで、ソフトウェアが対応できない状況が発生するとオペレーターが運転を引き継ぐ。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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