ウォルマートは人工知能とロボットを現場でいかに使っているか ~ 傘下のサムズ・クラブに見る自動化と効率化の最前線

人工知能を業務に使う会社はむかしから数え切れないほどあるが、人工知能を機能させるための膨大な規模データセットを構築する能力という点では、ウォルマートほど強大な会社は皆無だ。CNBCによると、ウォルマートでは、顧客の消費体験と従業員の勤務体験を向上させるための手段として人工知能の活用に何年も前から積極的に取り組んでいる。同社はこんにち、それらを現場でいかに実現しているのか。

▽国内5300店舗、従業員160万人という巨大規模

ウォルマート(Walmart)の支店は米国内に4700、同社傘下のサムズ・クラブ(Sam’s Club)の店舗は600あり、合わせて160万人の従業員を雇用している。

取りあつかう商品の種類と数、出入り業者の数、利用客の数、それらどれをとっても世界最大であり、したがって、同社が集めるデータの数も天文学的規模に達する。

人工知能はウォルマートのきわめて重要な戦略だ、と同社の技術戦略&商業化担当上席副社長アンシュ・バードワージ氏は話す。その戦略は傘下の倉庫型大規模小売店チェーンのサムズ・クラブにも反映している。

▽買い物データ分析によって需要予想や在庫管理を最適化

サムズ・クラブでは、会員制モデルのもと、会員らが何を検索し、何が好きで、何をいつ買っているかという膨大な量のデータを蓄積している。

それらのデータを分析することで、需要動向の予想をはじめ、支店間および地域間の動向に関する洞察、供給網と在庫管理の最適化、消費者への個人化販促といったさまざまの過程を合理化しながら来店客たちの買い物体験を向上できる、とバードワージ氏は説明する。

サムズ・クラブの店舗の広さは平均13万6000平方フィートで、約6000種類の商品が常時売られている。同社は、機械学習搭載の在庫追跡ロボットによってそれらの在庫をつねに把握できるようにすることで、品切れを起こさないようにしている。

▽床を掃除しながら全商品をスキャンするロボット

床磨き(floor scrubber)と俗称されるそのロボットは、店内通路を自律移動しながら床を掃除すると同時に、商品陳列棚に置かれたすべての商品をスキャンして毎日2000万枚の商品写真を撮って在庫管理を自動化している。

サムズ・クラブではそれによって、数ある類似商品を正確に識別し、正しい場所に陳列されているかどうかやどの商品が品薄か、正しい値札がついているかどうかを読み取り、さらには何かの物陰に隠れているものがどの商品かといったデータを担当者らに転送する。

▽機械学習アルゴリズムの商品識別精度は95%

それらの機能は機械学習なしでは実現しない。店内照明の明るさ加減や陳列棚の奥行きも考慮し、異なるブランドや類似商品、それぞれの正しい陳列場所と在庫を見分けるアルゴリズム・ソフトウェアの精度は95%だ。あらかじめ設定された量まで少なくなった商品を見つけると、商品保管室に自動通知して要補充を知らせる。

商品保管室に当該商品がない場合には、その日に予定されている配送に当該商品が含まれているかどうかを確認し、入荷予定であれば、その商品を保管室ではなく売り場に直接持っていくよう担当者たちに自動通知する。それによって品切れが起きる可能性を排除し、販売機会喪失を回避する。それと同時に作業量も減る。

バードワージ氏によると、その機械学習技術を2022年に同ロボットに搭載して以来、売り場従業員らの生産性が15%向上した。

▽ウォルマート、消費者の買い物負担を人工知能で軽減

サムズ・クラブの親会社であるウォルマートは、人工知能アプリケーションの開発と導入にも注力している。たとえば、顧客がウォルマート・アプリケーションでパンパースを注文した場合、その消費者が同商品を最後にいつ注文したかやサイズが同じかどうかを認識し、前回と異なる場合には、それを購入者に知らせることで誤注文を避けるようにした。

「われわれは、顧客が何を求め、どのように届けるのが最善なのかを見きわめ、よりよい方法をつねに見つけようとしている」「人工知能はそういった判断を簡単にくだすための手段だ」とバードワージ氏は話す。「日用品の買い物は面倒だ」「利用客にとって買い物の負担をできるかぎり軽減することがわれわれの目標だ」と同氏は述べた。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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