クレイムス・ジャーナル誌によると、会社らによる情報開示要求と要件が世界的に厳しくなるなか、弁護士らはESG(environmental, social, and governance=環境、社会責任、企業統治)関連の訴訟の増加に追われている。
▽弁護士の24%、今後12ヵ月間にさらに増えると予想
法律事務所ノートン・ローズ・フルブライト(Norton Rose Fulbright)が実施した調査では、430人以上の顧問弁護士と訴訟専門の社内弁護士らの28%は、ESG関連の係争が2022年に増加し、24%が今後12ヵ月間にさらに増える、と予想していることがわかった。
その主因は、ESGの明確な基準や要件が存在しないことや、ESGの重要性と関連情報の開示に対する規則遵守の監視が強まっているためだ。
▽「将来に懸念される集団訴訟分野」
会社らのESG対応および関連情報開示をめぐる訴訟増の問題は、雇用問題や労使紛争、サイバーセキュリティー、データ保護と並んで、ノートン・ローズ・フルブライトが「将来に懸念される集団訴訟分野」と位置づけている。
そういった動きは、金融サービスから技術まで幅広い業界にまたがり、企業訴訟担当者らの注目が高まっている。グリーンウォッシング(環境配慮に注力している姿勢を表面的に装うこと)に関連した集団訴訟の増加傾向への対応が深刻化しているためだ。
ESG関連業務の簡便化や効率化を推進する各種の技術ソリューションの需要が近年につよまっているのも、そういった動向が原動力となっている。
▽株主や取り引き先、規制当局からの情報開示圧力の強まり
ノートン・ローズ・フルブライトによると、カリフォルニアの原告団が「そういった訴訟を起こす方法を明示した」ことにその一因がある。そのため、一般的なESG対応内容を表明する会社が、特定の製品に特化したESG関連業務の不備や不足に関して訴訟の標的になっている。
ノートン・ローズ・フルブライトの訴訟担当パートナー弁護士であるレイチェル・ルース氏は、「業界を問わず、われわれの顧客会社らは、株主や取り引き先、規制当局から、ESG目標やその具体的実績に関する情報開示を増やすよう圧力を受けている」「それらの開示が虚偽または誤解を招く、あるいは不十分であると認識された場合、訴訟になる可能性が高まっている」と話した。
▽集団訴訟を警戒する弁護士の37%はESGをその理由に
ノートン・ローズ・フルブライトの調査報告によると、調査対象会社のうち、2022年にESG関連の集団訴訟に巻き込まれたと答えた割り合いは8%だったが、今後の集団訴訟を警戒していると答えた人たちの約37%がESGをその理由に挙げた。
同事務所によると、ESG訴訟をもっとも懸念する業界は飲食品だ。たとえば、再生利用や使い捨てプラスチックに関する取り組みを含むESG情報開示内容に、事実と異なる説明が見つかれば訴えられる可能性が高まっている、とルース氏は指摘する。
▽SEC、2023年3月末までに規制案をまとめる予定
米証券取引委員会(SEC)は現在、気候変動リスクや供給網における温室効果ガスの排出について、さらなる情報開示を上場企業に求める提案について、これまでに寄せられた数千の意見や提言を精査しているところだ。
SECは、それらの内容を参考にして、2023年3月末までに規制案をまとめる予定だ。規制内容が決まれば、これまで使われてきた各種のESG報告書類作成効率化ソフトウェアやデジタル・ツールの更新版があいついで提供されるほか、規制内容の遵守のために最適化された新たなソフトウェアが法人向けデジタル技術各社から出されることになるだろう。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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