「行動のインターネット(Internet of Behavior)」、略してIoBと呼ばれる通信プロトコールが、これから注目すべき技術として関心を集めつつある。技術コンサルティング会社オズ・デジタル・コンサルティング(OZ Digital Consulting)の最高ソリューションズ責任者エマニュエル・ラモス氏は、フォーブス誌に有料で出稿した3月中旬の記事のなかで、IoBが「人々の行動をモニターし、制御し、モデル化するための革命的な方法」をもたらすという見方を示した。
▽多種多様の技術を融合して意思決定の向上を目指す
ラモス氏によると、IoBとは、簡単に言えば、検知器やほかの技術を使って人々の行動を観察し、分析し、予想するためのシステムだ。
機械学習に代表される人工知能をはじめ、ビッグ・データ分析やクラウド演算、モノのインターネット(IoT)、モバイル・アプリケーション、身体装着型装置、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、ロボティクスといったさまざまの技術をすべて融合させて、一つのプラットフォーム上で管理することで、個人や集団の行動データを収集かつ分析する。
それらのデータを使って、究極的には意思決定を向上させるというのがIoBのおもな目的だ。
▽医療や小売、金融、教育、輸送交通ですでに活用
IoB技術を使うことの最大の利点は、自動化を通じて効率と生産性を高められることだ。人の行動パターンをリアルタイムに理解することで、組織はより良い意思決定をすばやく下しながら、手作業や非効率な処理過程を最小限に抑えられるようになる。
IoBがすでに使われている業界には、医療や小売、金融、教育、輸送交通がある。IoBは昨今、急成長中で、人間が世界をどのように理解し、世界とどのようにかかわるかに革命を起こす可能性がある、とラモス氏は説明している。
▽装置類を無線接続化しクラウドで運用
IoBでは、技術的にはブルートゥース・ロー・エネルギー(Bluetooth Low Energy=BLE)といった無線通信網や通信プロトコールを介して装置を接続することが基本となる。接続網が確立することで、データを各種のシステム間でリアルタイムに交換できるようになり、人工知能のアルゴリズムでデータを分析できるようになる。
そういった無線接続は、トランスポート・レイヤー・セキュリティー(TransportLayer Security)といった暗号化技法を使って安全性を向上させることができる。その生態系にはさらに、アマゾン・ウェブ・サービシズ(Amazon Web Services)やマイクロソフト・アジュール(Microsoft Azure)に代表されるクラウド・ソフトウェア・プラットフォームも含まれる。
▽無線通信プロトコールと末端電算の統合が必須
IoBシステムが効果的に機能するには、環境変化を検出するための検知器をはじめ、ワイファイ(Wi-Fi)やBLEといった無線通信プロトコールとデータを現場で処理するための末端電算(エッジ・コンピューティング)を組み合わせる必要がある。
さらに、ほかのアプリケーションやサービスとの統合のためにAPI(applicationprogramming interface)を多用する必要もある。それらの要素がすべて一緒になることで、利用者らの行動パターンを理解するためのインテリジェントシ・ステムが実現する。
IoBには多数の技術要素が関与するため、生態系に含まれているものをすべて理解して効果的に統合することが、IoBシステムを開発する際のカギとなる。
▽顧客に関する洞察の取得やセキュリティー脅威の検出に貢献
IoBにかかわる技術分野は現在、急速に進化している。特に人工知能の発達を受けて、自動的な行動分析が広く普及しつつある。
人工知能を使うことで、手作業では到底不可能だったであろう利用者行動パターンを特定できるようになる。結果として、顧客に関する洞察の取得を向上させたり、セキュリティー脅威を検出したりできるようになるとみられる。
相互運用性の標準規格も急速に開発が進んでいる。それもIoB技術に影響する。システム間や通信網間の相互運用性が向上するということは、より多くのデータ源を活用できることを意味し、その結果、予想結果の精度向上をもたらす可能性がある。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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