21年末に成立した予算1兆ドルの連邦インフラ投資・雇用法は、EVの充電サービス支援で注目を集めたが、24年に発表される同法の最終的な規則にはEVとは無関係の項目も含まれる。その中には、ドライバーが飲酒していることを検知して運転させないようにする機能の搭載を、国内で販売される全ての車に義務付ける内容がある。
■予想外の法制化
オートモーティブ・ニュースによると、この技術はまだ、少なくとも市場向けに製品化された純正の自動車部品としては存在しないため、業界は急いで開発を進めている。一歩先行するのは、スウェーデンの子会社が25年前からアルコール検知センサーやガス検知センサーを開発している旭化成だ。
同社は、自動車メーカー、ティア1サプライヤー、関係政府機関からなるコンソーシアム(連合体)と協力して、車載アルコール検知技術の商業的実現に向けて取り組んでいる。マイク・フランキー北米モビリティー責任者によると、早ければ26年に機能の導入が求められる可能性があり、「正直言って、この法律は当社だけでなく全ての自動車関連業者を驚かせた。過去にも提案されたことはあったが、誰もが最初の義務化は欧州だと思っていた。米国で成立したのは、民間団体の飲酒運転に反対する母親の会(MADD)が業界と協力して長年取り組んだ結果だ」という。
■新たな商機
旭化成が18年にスウェーデンの空気・ガスセンサー製造会社センスエア(Senseair)を買収したのも、この分野は欧州が先行しているとの読みからだった。センスエアの現在の課題は、新しいハードウェアを使わず車内に問題なく組み込めるセンサーの開発となっている。
運転席に座ったドライバーは、ステアリングコラムやサイドドアのトリムに埋め込める小さなセンサーに向かって息を吐き、呼気中アルコール濃度の判定を待つ…という手順だ。
センサーは、ドライバーの呼気中に自然に含まれる二酸化炭素(CO2)と比較して、呼気中のエタノール量を検出するアルゴリズムを使用する。特定の波長の赤外線がどれだけ周囲の空気に吸収されるかを測定する検出器を介して動作し、測定値を基に特定のガス(この場合はエチルアルコール)の濃度を算出する。
旭化成は、ティア1サプライヤーとしてこの技術を自動車メーカーに供給するのではなく、ほかの車内部品を通じて技術を搭載することになる可能性が高いという。
旭化成は、22年9月期の売上高が147億ドルに達した。化学品メーカーという印象が強いが、事業基盤の拡張や市場開拓に取り組んでおり、 近年は構造材料、エレクトロニクス、医療機器、診断機器などの分野でも存在感を示している。新時代の自動車安全機能の開発では、エレクトロニクスや医療機器など、旭化成が持つさまざまな知識を結集させている。
フランキー氏は「旭化成は米国の自動車産業により深く関わるため、自らのポジションを変えたいと考えている」と話した。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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