SVB証券(SVB Securities)傘下のモフェットネイサンソン(MoffettNathanson)が5月12日に公表した最新の調査報告によると、米国の有料テレビ・サービス業界(おもにケーブル・テレビ、衛星テレビ、通信サービス業者によるテレビ・サービス)は2023年第1四半期に過去最多の231万世帯(純減)を失ったことがわかった。
ライトリーディング誌によると、月々の料金の高さと、従来の番組質の高さを維持できないという双子の「悲運悪循環(doom loops)」がその主因とみられる、とモフェットネイサンソンは結論づけている。映像娯楽手段の多様化や若い世代のテレビ離れという何年も前から指摘されてきた消費者動向の大きな転換があらためて浮き彫りになった格好だ。
米国の家庭向け映像娯楽市場において長年にわたって主流であるケーブル・テレビ・サービスを解約する「コード=カティング(cord-cutting )」は、インターネット経由で配信される映像娯楽が台頭し始めた何年も前から増え続けている。モフェットネイサンソンの調べによると、期中の有料テレビ・サービス市場は四半期売り上げとしては過去最悪の6.9%減を強いられ、加入世帯数では、前年同期に9.9%減だったのが11.4%減という過去最悪に悪化した。
米ケーブル・テレビ業界は期中に加入者204万世帯を失い、衛星テレビ業界は72万弱、vMVPDs(virtual multichannel video program distributors (vMVPDs)は30万弱、通信サービス業界は21万世帯を失った。テレビ・サービス業界が四半期に200万世帯の加入者を失うのは史上初だ。
モフェットネイサンソンによると、vMVPDsを含む米国内有料テレビ・サービスの普及率は58.5%に低下し、過去37年間で最低の水準になった。
モフェットネイサンソンのクレイグ・モフェット分析家は、テレビ・サービス料金が上昇し、スポーツ中継以外に価値を見出さない視聴者が増え、娯楽コンテントに特化したインターネット配信サービス群に加入者を奪われ、その結果、テレビ放送局らの番組制作能力が劣化し、それがさらに逐次配信サービス業者らへの加入者流出を助長している、と指摘する。
そのため、既存のケーブル・チャンネルはいずれDTC(direct-to-consumer)の逐次配信モデルに移行する可能性がある、と先日話したESPNのジミー・ピターロウCEOの発言をモフェット氏は指摘し、既存の有料テレビ・サービス・モデルが「貧困化のサイクル」に直面している、という見方を示した。
「貧困化サイクルはすでに勢いを増しており、その流れにあらがうのはもはや非経済的だ」とモフェット氏は述べた。
(Gaean International Strategies, llc社提供)
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