米港湾の自動化、なぜ進まぬ~ロボット活躍はLA・LBの一部

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)をきっかけに米国内の貿易港が輸入貨物であふれ返った際、一部の港湾では自動クレーンや自動運転コンテナ運搬船が大活躍した。しかし、その他の港湾ではコロナ禍後も自動化は遅々として進んでいない。

■組合の壁

ウォールストリート・ジャーナルによると、2020年から22年にかけて米国のサプライチェーン(供給網)が混乱と遅延に見舞われる中、南カリフォルニアのロングビーチ(LB)港や隣接するロサンゼルス(LA)港では、ロボット機器が大量のコンテナを船からドックに移し、待機するトラックに積み込んで内陸部の流通網に届けさせるなど、貨物を効率的に処理した。

しかし、同じ南カリフォルニアや国内のほかのコンテナターミナルで同様の自動化を進めているところはほとんどない。アジアや欧州の高度に自動化されたゲートウェイ(玄関口となる港)を知る多くの海運業界幹部は、そのことに不満を抱いている。

上海の洋山深水港、オランダのロッテルダム港など毎日何千ものコンテナを扱う港では、自動化が貨物の渋滞防止に大きく役立っているのに対し、米国の港湾はこのままだとコスト削減や時間短縮による効率化が進まず、他国と競争できなくなると指摘する経営幹部もいる。

しかし米政府関係者によれば、国内の港湾にはロボットを導入する上で大きな障害がある。それはスペースの制約、多額の投資からリターンを得るための厳しい経済性、そして何よりも労働組合の激しい反対だ。

倉庫作業から自動運転トラックまで、さまざまな物流業務により多くのロボットを使おうとする企業が増える中、港湾における労働問題は自動化をめぐる重要な課題になっている。西海岸の港湾における最近の労使交渉は、6月に両者が暫定合意に達するまで1年以上もかかった。長引いた理由の一つは自動化をめぐる論争だったが、現在、この争点は東海岸とメキシコ湾岸の港湾に移りつつある。

東海岸とメキシコ湾岸の港湾労働者で構成する国際港湾労働者協会(ILA)のハロルド・ダゲット会長は7月の大会で、海事業務の自動化を阻止するために海事労組の国際組織を構築する意向を表明。「ILAと世界中の港湾労働者が導火線に火をつけ、爆発を起こす」「今こそ自動化推進企業を廃業に追い込む時だ」と息巻いた。

■良いことばかりでもなし

用地問題も、米国の施設にとっては懸念事項だ。ロサンゼルス港、ロングビーチ港、ニューヨーク港、ニュージャージー港のような主要港は広大な都市圏に囲まれている。アブダビ(アラブ首長国連邦)のカリファ港のように、スペースに余裕のある緑地や沖合に建設された世界で最も効率的な港とは対照的だ。

ロングビーチの近代的なターミナルは、1エーカー当たり従来のターミナルの2倍のコンテナを扱える。しかしこれは、全米で最もコンテナ貿易が盛んなLA/LB港が自動化を進める4施設の一つにすぎず、ほかに9施設あるLA/LBのターミナルのオペレーター(運営会社)は、自動化への熱意をほとんど示していない。その多くは海運業者や投資ファンドに支配されており、設備自動化に必要な数十億ドルを支払う余裕はないという。また、それらのターミナルは自動化には小さすぎたり不格好な形をしていたりして、投資に見合う作業効率の向上が期待できないという。

S&P グローバル・マーケット・インテリジェンスのターロック・ムーニー氏は、自動化によって港湾はより効率的に土地を利用し、より一貫した運営を行えるようになると話す。ただ「自動化が自動的に船舶のターンアラウンド時間(作業の所要時間)の短縮につながるかというと、確かにそうではない」とも指摘する。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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