米国でHVへの関心が再燃~フォードなど積極展開へ

自動車業界では完全電動モデルの開発が急ピッチで進められているが、ガソリンと電気のハイブリッド車(HV)も、一部で予想されたほど急速に消えることはないかもしれない。

■売りやすい選択肢

ロイターによると、一部の自動車メーカーは、一足飛びで電気自動車(EV)を購入する準備ができていない個人や商業顧客向けの選択肢としてHVを売り込んでいる。投資管理会社インガルス&スナイダーのシニア・ポートフォリオ・ストラテジスト、ティム・グリスキー氏は「ハイブリッドは完全EVに代わる素晴らしい選択肢で、多くの客に売りやすい」と分析する。

完全EVに対する消費者の需要は予想ほど加速しておらず、HVへの関心が回復しつつある。EVの需要が低迷する理由としては、初期コストの高さや航続距離への懸念、充電時間の長さや公共充電所の不足などさまざまな要因が挙げられる。生産予測会社オートフォーキャスト・ソリューションズのサム・フィオラニ副社長は「排ガス規制が強化される中、HVは買い手にとって完全EVへと飛躍することなく手に入れられるクリーンな車両だ」と述べた。

■販売は5年で3倍増か

S&Pグローバル・モビリティーは、今後5年間でHVは3倍以上増加し、2028年には米新車販売の24%を占めると予測。完全EVの割合は約37%で、低出力モーターを備えたいわゆるマイルドハイブリッドを含む内燃エンジン車(ICE)は40%近くになると見ている。23年の米自動車販売に占めるHVの割合は7%、完全EVは9%で、ICEは80%以上を占める見通し。

歴史的に見ると、米国ではHVの販売構成比は10%未満で推移し、トヨタの「プリウス」が長年の人気モデルとなっている。トヨタは完全EVへの投資を徐々に拡大しているものの、これまで一貫してHVが同社の長期的な電動化計画で重要な役割を果たすと述べてきた。

最近になって積極的なハイブリッド計画を打ち出しているのはフォードで、ジム・ファーリーCEOは7月下旬の4~6月期決算説明会で「今後5年間でHVの販売台数を4倍に増やす」と表明し、アナリストらを驚かせた。

これに対し、ゼネラル・モーターズ(GM)は完全EVへの取り組みを続ける意向で「世界的にはハイブリッドも提供するが、依然として重点は30年までにポートフォリオを電動車にシフトすること」と話している。

ステランティスはトヨタやフォードのように、20年代半ば以降に完全EVの販売が本格化するまで、HVを含むさまざまなパワートレインの選択肢を米消費者に提供する見込み。

トヨタとその高級車ブランドであるレクサスは、18種類以上のHVモデルを販売してこの分野で優位を保っており、現代(ヒョンデ)と起亜は7種、フォードとリンカーンは6種、ステランティスは3種のHVを販売している。

GMのラインアップは、23年後半に発売予定の「シボレー・コルベット」HVバージョンのみにとどまる見通しだ。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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