サプライチェーン(供給網)の強化を目的に米企業の多くが海外にあった製造拠点をメキシコに移しているが、最近の国境の状況は、生産を自国に近づけることにもリスクが伴うことを示している。
■鉄道とトラックの入国が停止
ウォールストリート・ジャーナルによると、メキシコの鉄道会社フェロメックス(Ferromex)は9月下旬、米国を目指す不法移民の急増を理由に一部の列車の運行を停止。米国税関・国境警備局(CBP)もテキサス州エルパソとイーグルパスの検問所で鉄道とトラックの通関手続きを一時閉鎖したため、数日間にわたってトラックや鉄道の動きが止まった。
フェロメックスが一部の貨物輸送を停止したのは、列車の屋根に乗って国境に向かう不法移民が数千人に膨れ上がったためで、数件の事故が報告され、死傷者も出た。
税関当局は、急増する移民への対応に職員を振り向けるため、一部の検問所で鉄道とトラックの入国を止めた。米鉄道大手BNSFとユニオン・パシフィックは手続きが再開されるまで貨物を留め置いている。混乱は、メキシコの税関システムの停止や、テキサス州当局がすでに国境を通過したトラックの二次検問を再開したことでさらに悪化した。
■不確実性が浮き彫り
約2000マイルにわたる米メキシコ国境に設置された商業検問所での一連の出来事は、製造業務や調達をアジアから北米へ移そうとするメーカーや輸入業者の懸念を如実に表しており、製造を北米に移しても、サプライチェーンの簡素化で回避しようとしている不確実性や局所渋滞は消えない可能性がある。
米国の物流サービス大手C・H・ロビンソン・ワールドワイドのマイク・バークハート副社長は「国境の混乱は散発的な問題だが、最近の渋滞はこれまで見た中でも最悪」と話す。同社は、メキシコのメーカーが工場を閉鎖しなくて済むよう、サンアントニオから西に約140マイル離れたイーグルパス検問所からほかの検問所にトラックを迂回させて国境を通過したという。
しかし、物流業界幹部によると、国境通過の直前に検問所を切り替えることは難しく、通関には貨物の引き渡しや書類作成のため、国境の両側でトラック運転手や通関業者など企業間の調整が必要になる。レッドウッド・ロジスティクス・メキシコのジョーダン・デュワート社長は「検問所を変更する場合、複数のパートナーと契約をし直さなければならない」と述べた。
メキシコに工場を持つ米国のあるテクノロジー企業は、すべての生産をメキシコに移さない理由の一つに「国境での遅延」を挙げており、貿易量の増加に対応できない国境沿いのインフラの貧弱さも問題に拍車を掛けている。
メキシコシティを拠点に国境を越えた貿易を専門としている物流業者EASOトランスポートのディエゴ・アンチュステギ最高マーケティング責任者は「トラックによる国境通過は悪夢と化している。メキシコと米国間の移動を本当に改善する方法に政府が投資しない限り、こうした事態は将来もっと増えるだろう」と話した。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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