インスタグラム、若年利用者の精神衛生に有害か ~ 米42州の司法省、親会社のメタを提訴

米42州の司法長官らは、利用者たちの精神衛生危機を煽った疑いでメタ・プラットフォームスとその傘下のインスタグラムを提訴した。ロイターによると、原告らは、若年の利用者たちが中毒になるよう同社がソーシャル・メディアを運営し、一部の利用者らの精神状態を不安定にさせている、と訴えている。

▽十代利用者らを「利益のために」「罠にはめた」

カリフォルニアやニューヨークを含む33州の司法長官は、10月24日に提出した訴状のなかで、メタ・プラットフォームス(Meta Platforms)が自社プラットフォーム群の危険性について利用者らに繰り返し誤解を与え、意図的に幼児や十代の若者たちを依存性と強迫性のあるソーシャル・メディアに誘導している、と主張した。

カリフォルニア州オークランド連邦裁判所に提出された訴状によると、「メタは強力かつ前例のない技術を使って、青少年や十代を誘惑し関与させ、最終的には罠にはめた」「それも、自社の利益のために」。

▽子どもは将来の収入源またはその基盤

子どもたちは会社らにとって魅力的な人口層だ。子どもたちを利用者および消費者として引きつけ、ブランド忠誠心を醸成することで将来の市場基盤を確保できるためだ。

メタにとっては、成長したそういった利用者たちが消費者として重要な消費人口になった際に、自社のソーシャル・メディア・プラットフォームが広告主たちにとって魅力的な効果的広告媒体になる原動力となる。

▽うつや不安、不眠症の原因に

各州司法省の調査によると、児童によるメタ・ソーシャル・メディア・プラットフォーム群の利用は、「うつ病や不安、不眠症、教育および日常生活への干渉、そのほか多くのマイナスの結果」と関連づけられている。

既出33州のほか8つの州とワシントンDCも同日に、メタに対して同様の訴訟を起こしており、同社を告訴した州政府は計42となった。

メタ以外にも、中国バイトダンス傘下のティック・トックとアルファベット傘下のユーチューブもすでに、ソーシャル・メディアの中毒性をめぐって、子どもや学区を代表する数百件の訴訟に直面している。

▽違反ごとに1000ドルから5万ドルの罰金

メタは、今回の一連の訴訟において、各州の法律の違反ごとに1000ドルから5万ドルの民事罰金を科せられる可能性がある。インスタグラム(Instagram)を利用する子どもや十代が数百万人単位でおり、その一部が深刻な精神的悪影響を受けていることを考慮すると、賠償金は大きく引き上げられる可能性がある。

メタの訴訟は、インスタグラムの中毒性がきっかけの一つと言われる。一部の少女たちの身体イメージの問題を悪化させることを同社が知っていたことを示す内部告発者が2021年に公開した文書に端を発している。

似たような問題は、ワッツアップやメッセンジャーといったメタ傘下のほかのソーシャル・メディアでも前から指摘されている。

▽少女の自殺から距離を置こうとした姿勢に批判

33州の司法長官は、若者たちが投稿に対するほかの利用者たちからの「いいね!」というかたちでの承認欲求に影響されやすいことをメタが承知していたにもかかわらず、若者たちがソーシャル・メディアにできるだけ多くの時間を費やすよう努めてきた、と主張している。

訴状によると、メタはそれらの指摘に関する責任をすでに否定しており、利用者責任という立場を主張している。

メタとインスタグラムは2022年に、自殺願望や自傷行為に関するコンテントをインスタグラムで暴露された英国の14歳の少女が自殺したことから距離を置くようにしたことについて批判された。同事件を担当した検死官は、そういったコンテントが子どもに「安全」だというメタ幹部の主張を却下し、少女が自殺する前に感じていたうつ状態を常態化させるような有害コンテントを大量に目にしていた可能性が高いと供述した。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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