会社らの人工知能技術の投資リターンは3.5倍 ~ IDCの調査で判明、従来とは比較にならない高水準

米調査会社IDCは、会社らによる人工知能への投資が平均3.5倍のリターンを生み出している、という調査報告書を11月初旬に公開した。ベンチャービート誌によると、同調査はマイクロソフトが発注したものだが、IDCが独立的な立場から、世界各地の会社らの意思決定者2100人を対象に実施した。

▽驚異的な投資利得率250%

IDCによると、調査に応じた経営幹部らは、人工知能技術導入に際する1ドルの投資に対して平均3.5ドルのリターンを得ていると回答した。それは、250%の投資利得率をもたらしていることを意味し、これまでに行われた調査とくらべて非常に大きい数値だ。

たとえば、IBMが5月に2500人の企業幹部を対象に実施した調査では、投資利得率は5.9%とはじき出された。典型的な資本コストが10%であることを考えれば、人工知能への投資はリスクが高いことを意味する。

また、デロイトが2020年10月に行った調査では、投資利得率が5%を超えれば高パフォーマンスと見なされた。さらに、PwCは2021年7月に、人工知能の投資利得率を算出するのがいかに困難かに重点を置いた記事を発行した。

▽回答者らの感覚にもとづく点に要留意

IDCの調査は2023年9月に実施された。2022年末に生成人工知能が注目され始めたあとに行われたおもな調査の一つだ。同調査では、回答者の71%が人工知能をすでに使っていると答え、22%は今後12ヵ月以内に導入する計画だと回答した。また、人工知能導入計画の92%が12ヵ月以内で完了し、過去のほかの技術にくらべて導入が迅速に行われている実態が明らかになった。

IDCの調査において、人工知能への投資利得率を数値化するよう回答者に求めたのは今回が初めてだ。IDCは、2倍、3倍、4倍、5倍の選択肢を提示し、5倍を上回る場合は具体的な数値を記入するよう求めた。

回答者が提示した数値は検証されていない。したがって、回答者たちの印象や野心的姿勢が反映され、科学的根拠に乏しい可能性はある。

同調査結果で示された投資利得率が実態に近いのであれば、投資にほとんどリスクがないことを意味する。また、実験(検証、試験運用)にかかるコストや失敗した場合のコストを回答者が考慮していない可能性もある。

▽経営陣ら、人工知能導入の優先順位を引き上げ

IDCの人工知能および自動化技術調査担当リトゥ・ジョーティ氏は、多くの会社が人工知能関連の活用を重視し、ほかの計画の優先順位を下げている実態を指摘する。「それは新しい現象だ」と同氏は話す。

回答者の約32%が、人工知能への投資を増やすためにほかの部署や業務の予算を平均11%削減したと答えた。予算削減対象はおおむねIT以外で、事務支援やサービスが多い。幹部らの秘書のほか、人材資源管理や顧客サービス、技術支援といった部署で予算が削られている、とジョーティ氏は指摘した。

生成人工知能が話題になるまで、人工知能の開発と採用はきわめて高度の技術領域に限定され、多くの会社内で目に見える動きではなかった。「生成人工知能がそれを変えた。経営陣や取締役会が人工知能の活用の優先順位を上げ、それが、導入への投資をあと押ししている」とジョーティ氏は話した。

▽金銭化には時期尚早

生成人工知能が実際にリターンをもたらすことは別の調査でも示されてきた。ハーバード大学を含む複数大学の研究者らがボストン・コンサルティング・グループの従業員を対象に実施し、9月に発表した調査結果では、さまざまの作業にGPT-4(GenerativePre-trained Transformer 4)を使った結果、従業員らのパフォーマンスが40%上がることが報告された。

とはいえ、生成人工知能の利点を金銭化するには時期尚早だ。「ほとんどの会社が早期の導入段階にあり、評価中または試験運用中だ」とジョーティ氏は指摘する。IDCの調査が対象としたのは、生成人工知能ではなく従来型の人工知能だったが、生成人工知能のツールやサービスが反映されたことに疑問の余地はない。

IDCの調査では、顧客満足度や従業員の生産性、市場占有率を含む複数の点において平均18%の向上が確認された。その一方で、データや知的財産の喪失、統治(人工知能技術運用に必要な種々の管理)の欠如といった懸念も回答者は感じていたことがわかった。

▽高職能熟練労働力の不足が課題

マイクロソフトのアリサ・テイラー本部副社長は、人工知能の潜在性を理解するために同調査をIDCに依頼したと説明している。多くの会社が大きな課題を解決するために人工知能を活用するなか、特に生成人工知能が大きな変化を起こしており、「生成人工知能は革新曲線を急上昇させている」と同氏は話す。

生成人工知能は、末端利用者向けに簡便化されていることから、だれでも手軽に使え、さまざまの用途が利用者たちに開拓されている。たとえば、医療現場で医療記録の作成を支援するほか、ソフトウェア開発現場で一部の作業を自動化するといった使い方が挙げられる。

今回の調査では、人工知能導入の最大の課題として高職能熟練労働力の不足を挙げた回答者が52%に上った。マイクロソフトは、世界各地の600万人以上に職能研修プログラムを提供し、また40万以上の協力(協業)先に研修を施すことで、その職能不足を埋めようとしている、とテイラー氏は話した。

(Gaean International Strategies, llc社提供)

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