ミシガン大学の研究チームは、走行車両のわずか6%から得られる衛星利用測位システム(GPS)データを使って交通信号を調整し、交差点の混雑や遅延を大幅に減らすことに成功した。
◇停止回数が2~3割減
ミシガン・エンジニアリング・ニュース(大学新聞)によると、研究チームは、ゼネラル・モーターズ(GM)から提供されたコネクテッドカー(インターネットと常時つながる車)のデータを基に、ミシガン州バーミンガムで18カ月にわたる予備的研究を実施。この結果、信号機のある交差点での車の停止回数を20~30%減らせた。現在国内を走る車のうち、GM車は6~10%を占める。
これは、クラウドベースで交通信号のタイミングを調整する世界初の大規模システムであり、完成すれば地域社会が低コストで信号のパターンを再調整できる可能性がある。
システムは、道路を走る車両の一部から取得したGPSデータを基に交通パターンを推定する。コネクテッドカーが交差点の約100フィート手前で停止していた場合、前方には少なくとも3~4台の車が止まっていると考えられる。
同大学の自動化交通実験場「エムシティー(Mcity)」と「コネクテッドカーおよび自動輸送センター」でいずれも所長を務めるヘンリー・リュー教授(土木工学)は「交差点に設置された検査器は交通量と推定速度を提供できるが、車の動きに関する情報が得られれば、たとえ全体に占める割合は少なくても、車の遅滞、停車回数、経路選択などより価値あるデータを提供する」と話す。
◇調整は頻繁にすべき
米国にはおよそ32万基の信号機があり、信号交差点よって発生する渋滞の年間コストは、直接・間接合わせて229億ドルに上る。これらのコストには、信号待ちの時間、信号で止められる回数による不必要なエネルギー消費などが含まれる。
ほとんどの信号機は、午前、午後、夕方、夜間といった時間帯別の信号計画に基づいて作動しており、交通計画担当者は、それぞれの周期を周辺の交差点と調整し、できるだけ少ない停止・発進の回数で車が流れるようにしている。
リュー教授は「交通は常に変化しており、信号のタイミングはもっと頻繁に変更されるべきだ。例えばパンデミック(新型コロナウイルス大流行)前の1年間と以後の2年間では交通パターンが変わり、在宅勤務をする人が増えて朝の混雑時間帯が劇的に変化した。こういう変化があれば信号の調整が必要になる」と指摘する。
ただ、現実に交通量の変化に合わせて信号を同調させるのは簡単ではなく、ほとんどの自治体は、交通量の測定や再計算にかかるコストや時間を考えて2~5年、場合によっては数十年見直しをしないこともある。交差点で車を検知し、ほぼ同時に信号をプログラムし直す適応型信号は1970年代から存在するが、一つの交差点に設置するのに5万ドルもの費用がかかり、定期点検も必要なため普及には至っていない。
ミシガン大のシステムは、「確率的時空間ダイヤグラム(probabilistictime-space diagram)と呼ばれ、コネクテッドカーのデータ割合が低くても適応型信号機のセンサーと同等の仕事量をこなすことができ、最適化のためのコストは適応型システムに比べるとわずかで済むという。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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