連邦通信委員会(FCC)の委員長がこのほど、インターネットと常時つながる自動車を販売する自動車メーカーを、ドメスティック・バイオレンス(DV)の被害者保護を目的とした通信法の適用対象とする新規則を提案した。
◇車を使ったストーカー行為が増加
ロイターによると、位置情報の追跡、ドアロックやクラクションの遠隔操作など、車により高度な機能が加わるのに伴い、車載技術を悪用したストーカー行為が増えている。FCCのジェシカ・ローゼンウォーセル委員長は2月28日、大手自動車メーカー9社と通信事業者3社に書簡を送り、ネットにつながる自動車技術とDV対策に関する方針について、より詳しい情報を求めた。
連邦の安全通信法(Safe Connections Act)は、DV被害者が安全に通信サービスを使えるようにする権限をFCCに与えており、FCCはすでに同法に基づいて通信事業者に対し、DV加害者が契約する家族向け電話プランとリンクする電話回線の分離を求めている。
委員長は「コネクテッドカー絡みの問題とDVは非常に似ている」と見ており、他のFCC委員に規則作成提案通知書を配布する予定だという。FCC全体で採択されれば公式な意見募集が行われ、最終的に新規則制定につながる可能性がある。委員長はこの通知で、車を通じたストーカー行為、嫌がらせ、脅迫の被害者を守るために車両サービス提供者がどのような事前対策を講じられるか意見を求める予定で、「創造的な意見を歓迎する」と話している。
◇AAIは「法の適用外」と主張
これに対し、電気自動車(EV)大手を除くほとんどの主要メーカーが加盟する米国自動車イノベーション協会(AAI)は、車載コネクテッド・サービスは安全通信法の「適用外」であるという考えで、過去に送ったFCC委員長あての書簡で「接続機能は特定の個人でなく車と関連するため、車のユーザー間で分離することはできない」と主張した。
これとは別に、カリフォルニアのデイブ・ミン州上院議員(民主)は、DV被害者からの要請があった場合、2営業日以内に加害者が車載技術を使えなくするよう自動車メーカーに義務づける法案を発表した。これによると、被害者が接近禁止命令を提示するか、裁判所が車両の単独所有権を認める判決を下した場合、自動車メーカーは対応しなければならない。
ロイターは2023年12月、接近禁止命令を受けた夫がテスラの技術を使ってストーカー行為や嫌がらせをしていると何度も訴えたが対応しなかった同社を裁判所に訴えたものの、敗訴した妻の話を報じた。妻は、用を済ませて自身が運転する「モデルX」に戻った時、ドアが開いていたりサスペンション設定が変更されていたり、充電機能がオフになっていたりした経験があるが、テスラは夫が車載技術を使ってストーカー行為をした証拠はないと反論した。
裁判記録によると、夫婦で車を購入した時、夫は自身をアカウント管理者に設定し、妻を追加ドライバーとして登録したため、妻は夫のパスワードが分からず夫のアクセス権を無効にできなかった。テスラは、共同所有者として2人の名前が残っているため、夫の所有権を削除することはできないと説明した。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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