車載安全システムの複雑化や、モデルイヤーごとに導入される軽量な新しい複合材料などにより、自動車修理業界の負担が大幅に増えているという調査結果を、自動車保険の修理代申請を処理しているCCCインテリジェント・ソリューションズ(CCC、本社イリノイ州)が発表した。
◇待ち時間は60%増
オートモーティブ・ニュースによると、CCCの最新報告書「Crash Course2024」は「先進技術により、車はより安全で事故回避能力が高まり、より環境に優しくなったかもしれないが、修理コストや保険申請にかかる費用は上昇し、サイクルタイムが延びて日程調整の遅れが生じており、見積もり後に車が修理工場に入るまでの時間は(新型コロナウイルスの)パンデミック以前に比べて60%長くなっている」と分析している。
ワシントンDC郊外に2店舗を構え、30人の従業員を抱える修理業者CollisionCare Auto Repairのオーナー、マイク・ムーア氏によると、車両より複雑になったのは連邦政府といくつかの州政府が企業平均燃費(CAFE)の目標を引き上げ始めた頃から。「新しいCAFE基準が発表されると、メーカーは極めて迅速に新素材を使い始め、私たちもトレーニング面や設備面で極めて迅速な適応、調整を迫られた」という。
◇新しい日常
新車コストの40%は、自動車の安全性、信頼性、快適性、自律性を高める電子部品によるものだが、CCCによれば、衝突警告、死角監視、車間距離制御(ACC)、アダプティブ・ヘッドライト(ハイビームの照射範囲を状況に応じて変えられる技術)、先進トラクション制御、GPSナビゲーション、自動駐車機能などが増えたにもかかわらず、自動車事故は年間およそ1300万件発生し、2360万人のドライバーが巻き込まれている。
CCC報告書を共同で作成したカイル・クルムラフ氏は「自動車の複雑化が ニューノーマル(新しい日常)を生み出している」「車両の複雑化と人件費の高騰、技術者不足が、保険会社や修理業者に持続的な圧力になっている」と語る。
新車に先進運転支援システム(ADAS)などの機能が搭載されるようになったのは2016年からで、現在米国内を走るライトデューティー車の約40%は16年以降の年式になっている。すでに多くの車に自動運転機能が搭載されており、ほとんどの新車にはレベル1またはレベル2の運転支援機能や自動緊急ブレーキ(AES)などの安全機能が付いている。近年こうした技術の搭載率は飛躍的に伸びており、CCCは17年の25%から23年には95%に達したと推定している。
◇自動車修理にも新分野
自動車技術の発達によって、修理業界の中でも事故で損傷したセンサーや安全システムの再調整だけを専門にする分野が急成長している。20年に設立されたバージニア州のLevel 5 Solutionsの場合、従来の工場で修理を受けた車両を引き取り、事故でターゲット調整が乱れた可能性があるセンサーを修理している。
また、事故車の修理工賃は過去2年間で上昇したほか、技術者の雇用数は6年ぶりの高水準になっており、関連技術者の新たな需要は27年まで年間2万人に達すると、CCC報告書は予想している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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