自動運転車(AV)技術の発達に伴い、人工知能(AI)は車両システムの意思決定、周囲の状況認識、予測モデリングにおける支援で重要な役割を果たしているが、こうしたAIシステムには弱点が潜んでおり、不正ソフトウェア(マルウェア)を使ったサイバー攻撃の的になる恐れがあることが、ニューヨーク州立大学(SUNY)バファロー校の研究で分かった。
AI関連情報のAIベース・コムによると、研究を率いたSUNYコンピューター科学工学部のChunming Qiao名誉教授は「今回の研究は管理された環境で実施されており、調査結果は既存のAVが安全でないことを意味する訳ではない」と話しているが、自動車、テクノロジー、保険、規制政策の各分野に大きな影響を与える可能性がある。
研究チームは過去3年間、バファロー校でAVに関する数多くの試験を行い、主にライダー(光検知・測距装置)、ミリ波レーダー、カメラが持つ弱点に焦点を当てた。研究者のYi Zhu氏によると、ミリ波レーダーは雨、霧、薄暗い環境といった悪天候下でも大部分のカメラより確実に物体を検知できるが、外部からハッキングされやすいという。
チームは3D(立体)印刷技術と金属箔(はく)を使って「brick mask(れんがのマスク)」と呼ばれる特別な幾何学的物体を作成。これを車両に取り付けるとレーダー検知に対して車両を「消す」ことができた。この実験は、レーダー検知においてAIモデルには弱点があることを強くうかがわせる。つまり、悪意ある部外者が走行前の車に有害な物体を取り付けたり、歩行者の荷物に有害な物体をしのばせたりすることで車や歩行者を検知システムで認識できないようにすることも可能になる。
このような攻撃の動機としては、保険金詐欺、AVメーカー間の競争、人に危害を加えようとする個人的な意図などが考えられる。
これらの攻撃シミュレーションは、悪意ある部外者が車の物体検知システムを熟知しており、一般の人は知らないという前提で行われた。このため、AVのセキュリティーは懸念事項ではあるが、公共の安全意識向上や技術的な保護対策も同じく重要になる。研究チームは今後、レーダー以外のセンサーのセキュリティーをさらに詳しく調査し、外部からの攻撃に対する効果的な防御策の解明に取り組むという。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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